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バレー高松卓矢が望む故郷への恩返し。
「裏切り」の声も覚悟した移籍とは。
posted2020/07/15 20:00
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph by
V.LEAGUE
「裏切り者、ってもっと言われると思っていました」
高松卓矢はそう苦笑した。
今年6月、V.LEAGUE DIVISION1(V1)のウルフドッグス名古屋(WD名古屋)に所属するアウトサイドヒッターの高松は、今シーズン、大分三好ヴァイセアドラーに期限付き移籍することを発表した。
Vリーグ内での期限付き移籍は、2016-17シーズンに、FC東京のセッター・玉宅健太郎が、堺ブレイザーズに1シーズン限りの移籍をした例がある。バレーボールに限らず、国内での期限付き移籍は、所属チームで出場機会に恵まれない選手が、同じポジションが手薄なチームなどに、出場機会を求めて移籍するというイメージがある。
しかし高松は、豊田合成トレフェルサで長年レギュラーとして起用され、2015-16シーズンには初優勝に貢献。チーム名がウルフドッグス名古屋に変わり、31歳で迎えた昨シーズンもレギュラーとして存在感を発揮していた。
そうした選手のVリーグ内での期限付き移籍というのは斬新で、まず「どうして?」という疑問が湧いた。その疑問をそのままぶつけると、高松はこう答えた。
地元の人々に「大分でプレーしてよ」
「僕のバレー人生は、間違いなくもう折り返し点をとうに過ぎている。このシーズン中に33歳になるんですから。その中で、自分が、ベストの状態というか、体が動く間に、自分を育ててくれた大分県に、何かしら貢献できることはないかなと考えた時に……、大分に大分三好さんというチームがあってくれたので、期限付きで移籍をさせてもらえないか、という話をさせていただいたんです」
今回の移籍を考え始めたきっかけは、2018-19シーズンに、高松の故郷・別府市の別府ビーコンプラザで行われたVリーグの試合だった。そのシーズン、高松は思うように調子が上がっていなかったが、久しぶりの故郷での試合で大活躍し、連勝に貢献した。
その大会の際に、地元の人々に、「高松君、もうちょっと今のチームで頑張って、引退する1年か2年ぐらい前になったら、大分でプレーしてよ」と言われた。
それから、「あ、そういうのもありだな」と考えるようになった。
「ただ、もう跳べなくなって、スパイクも打てなくなったヨボヨボの選手はいらねーだろ、って話じゃないですか。『何しに来たんだ?』となりますから。そんな状態で大分に帰るのは、はっきり言って失礼。だから、自分の体がしっかり動いて、まだチームにちゃんと貢献できるレベルにいるうちに、行ってみたいなという気持ちがありました」