フィナーレが訪れたのは8ラウンド。

　余裕を漂わせていても、内心はそこまでじゃない。右手の痛みも激しくなっていた。「何とか早くストップに持ち込みたい」が本音であった。

　フィナーレが訪れたのは8ラウンドだった。

　三浦は相打ち上等、まさに捨て身でパンチを振ってくる。

　内山はその暴風が去った後に、細かくパンチを入れていく。三浦の右目はもう塞がっていた。

　ジャブ、フックと強弱をつけた左に、チャレンジャーは対応できなくなる。チャンピオンはどこまでも落ち着いている。右目の次は左目に狙いを定め、こちらも腫れ上がってくる。

「『もう無理です』って自分から言ったんです」

　終了のゴング、三浦は力なくコーナーに戻っていく。インターバルの間にドクターチェックが入る。レフェリーの手が交差され、激闘に終止符が打たれた。

　だがドクターが止めたのではなく、三浦がギブアップを伝えていた。

「右目が塞がって、左目も薄目で見るような感じでした。『もう無理です』って自分から言ったんです。

　3ラウンドにダウンを獲ってからは、いいパンチを当てることができなかった。結局はあの一発だけ。やりづらかった。そうさせたのも内山さんの力。単純に自分の実力が追いついていなかった」

　ギリギリの勝負と、ギリギリの駆け引き。

　1ラウンドずつそれを続け、その積み重ねがTKOにつながった。ダウンしても「目が死んでいない」と感じさせるだけで違ってくる。

【次ページ】　右の拳がチャーシューの塊みたいに。