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井上尚弥のいとこ、井上浩樹は
なぜオタクボクサーになったのか。
posted2020/07/15 11:30
text by
齋藤裕(Number編集部)Yu Saito
photograph by
Koki Inoue
「ボクシングは仕事として、好きなアニメ、マンガ、ゲームのためにやっています。稼いできた賞金の7割くらいはそういった趣味に使っているはず。仕事(ボクシング)で辛い時は、2次元の世界に帰りますね。逃げるじゃなく“帰る”。あくまでホームは2次元なので(笑)。仕事のときだけ、現実に戻らなきゃいけないという感じです」
そう語るのはプロボクサー、井上浩樹(大橋ジム)、28歳。
2015年にプロデビューしてから15戦全勝、WBOアジアパシフィック・スーパーライト級王者にして日本同級チャンピオンだ。井上尚弥(WBAスーパー&IBF世界バンタム級王者)、井上拓真(元WBC世界バンタム級暫定王者)が従兄弟にあたり、「井上家の最終兵器」と称される逸材だ。
そんな彼が熱中し愛してやまないのがアニメ、マンガ、ゲームなどの2次元の世界。自他ともに認めるオタクボクサーは試合前、好きなアニメキャラがプリントされたピンク色のハッピを身にまとい、アニメソングが流れる中、リングに入場していく。
だが、一度リングに上がれば正統派のボクサーファイタータイプとして勝ちを重ねてきた。
『スラムダンク』の影響でバスケ部に。
ボクシングエリートの彼はなぜオタクとなったのか。コロナ禍で中止になっていた日本タイトル戦の再開第1戦目、7月16日の日本スーパーライト級タイトル防衛戦(対永田大士)を控えた王者が、たくさんのフィギュア、ポスターに囲まれた自宅の部屋からリモート取材に答えた。
1歳年下の井上尚弥の影響で、小学校3年からボクシングを始めた浩樹少年。2次元の世界に興味を持つきっかけはなんだったのか。
「兄がプレステで『テイルズ オブ デスティニー』というゲームをやっていて、初めはプレイする兄の後ろで自分はずっと見ていたんです。ただ、一定の装備をつけ、もうひとつのコントローラーでセレクトを押すと対戦が2人でできると知ってから、『自分もプレイできる!』とゲームの虜になっていきました」
一方でマンガ好きの父からマンガを借りて読むようになり、多くの影響を受けたという。
「『スラムダンク』を読んで小学4年生からクラブ活動でバスケを始め、ボクシングで忙しくなる中学の途中まで部活でやっていました」