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谷口彰悟、“優等生”からの脱皮。
フロンターレで模索するリーダー像。
posted2020/07/05 11:50
text by
林遼平Ryohei Hayashi
photograph by
J.LEAGUE
試合が始まって68秒後のことだった。
再開初戦となった鹿島アントラーズ戦に向けて用意してきたセットプレーが発動する。コーナーポストに立った脇坂泰斗からペナルティーエリア外でフリーになっていた大島僚太へと渡ると、そこから家長昭博を経由してクロスが送られた。
鋭いボールに合わせたのはファーサイドで待っていた川崎フロンターレのキャプテン・谷口彰悟。VAR判定による確認があればオフサイドを取られてもおかしくない“疑惑のゴール”だったが、昨シーズンのリーグ戦で無得点に終わり、「自分自身、得点のバリエーションをもっと増やしていきたい」と語っていた男からすれば、嬉しい今季初ゴールだった。
ただ、この試合、谷口が本領を発揮したのはゴールだけではない。後方からのビルドアップ、対人守備やカバーリング、周りを統率するキャプテンシー。約4カ月ぶりとなった久々のピッチで、チームの勝利のために戦い続けた。
変化を感じ取れたダイレクトパス。
特に違いを見せたのは後方からの攻撃への関わり方だ。
注目したいのは、ダイレクトで一気に前線にパスをつけた場面。例えば、49分のシーンでは相手の前線へのパスを先読みし、前に出ながらダイレクトで右サイドの家長へピンポイントパスを供給。51分には田中碧の横パスをこれまたダイレクトで蹴り、最前線に鋭い縦パスを通した。他にも何度かトライしており、ダイレクトの意識を高く持ちこれまで以上に攻撃へ関わろうとする姿が印象的だった。
その背景には、チームの変化とキャプテンへの就任、そして新型コロナウイルスによる中断期間の中で芽生えた新たな自覚がある。