“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
マリノス育ち山田康太が水戸で覚醒?
「変なプライドは全て消えました」
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2020/06/29 18:00
期限付き移籍でJ2水戸に加入しているMF山田康太。緩急をつけたプレーで、再開初戦の勝利に貢献した。
「マリノスが好き」は変わりません。
「マリノスが好きなチームであることは一生変わりません。正直名古屋にいた時も、水戸に来てからも、つい最近までも、『マリノスプライド』が残っていたのは事実です。でも、群馬戦の前日ミーティングで強化部の西村(卓朗)さんに『応援してくれる人たち、スポンサーの人たちのためにも必ず勝ってほしい』と伝えられて、『自分たちだけで水戸が成り立っているのではない』という気持ちにさせてもらった。試合までまだ1日あったにも関わらず、自分の中で気持ちが昂ったんです。
試合当日もウォーミングアップで音楽をかけながらみんなで気持ちを高めて試合に向かって行ったシーンで胸が熱くなりました。(前述の)シュートブロックのシーンも秋葉(忠宏)監督がよく口にする『水戸のDNA』が咄嗟に出たんです。秋葉監督から常に『最後のところで身体を張る、走りきるガムシャラさを持たないと、絶対に上にはいけないチームだ』と言われているので、それが染み込んできたのかなと感じたんです」
「1つにまとまれたような気がした」
この勝利は山田康太にとって、ただの1勝ではなかった。
「勝利してロッカールームに帰ってきて、みんなで喜びを爆発させた光景を見て、本当に心が震えたというか。まだ、たった1勝ですが、本当に『なんて素晴らしいチームなんだ』って感動したんです。ああやって純粋に勝利を喜べて、水戸というチームがまた1つにまとまれたような気がしたんです。
ピッチ外の取り組みも含め、『このチームは本気で上を目指しているんだ』というのを日に日に強く感じるので、物凄くやりがいのあるシーズンになるという確信を持っています。この1年で自分が相当伸びるんじゃないかという期待があります。変なプライドは全て消えました。今は純粋に水戸の一員として真っ直ぐに戦いたいです」
プロ3年目。改めてプロとしてのあり方、そしてやりがいを本当の意味で手にしたのだろう。それは成長への切符であり、未来を切り開くために重要な時間を過ごしている証拠でもある。誰のものでもない、サッカーにまっすぐ向き合う「プリンス」の姿から目を離せない。