“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
マリノス育ち山田康太が水戸で覚醒?
「変なプライドは全て消えました」
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2020/06/29 18:00
期限付き移籍でJ2水戸に加入しているMF山田康太。緩急をつけたプレーで、再開初戦の勝利に貢献した。
喜びを爆発させた背番号7。
67分には守備でも見せる。CKの崩れから群馬のMF田中稔也が左サイドから放った強シュートを、身を挺してブロック。ゲームを作るだけでなく、気迫のディフェンスで同点を許さなかった。
71分、中山がこの日2点目を決めたが、この推進力ある攻撃の起点になったのも山田だった。相手のクリアボールに反応し、マイボールにした味方に素早くサポートに入ってボールを受け、再攻撃につなげた。
終盤に追加点を奪った水戸は、試合終了間際に1点こそ返されたが、3-1で今季初勝利。フルタイムピッチに立った「背番号7」はタイムアップの瞬間に喜びを爆発させた。
「個人的にはまだ体の重さはありますが、全体的にはボールを保持できたし、相手の足を止めることができたので、得策を選べたかなと思います」
コンディションは万全ではなかったが、その分、頭をフルに使った効果的なプレーでチームに勝ち点3を引き寄せた。
見つめ直すことができた中断期間。
「今、どうやったら自分とチームがうまくいくかを考えながらやれています。それにやっぱりサッカーができて嬉しいのが正直な気持ちで、プレーのしんどさ、疲れすらもサッカーで得たものなので楽しいんです。きつい練習をみんなで乗り越えて、それを試合を通してみんなで発揮する。このサイクルがどれだけ幸せなことかを再認識しました。初心というか、当たり前だと思っていたことが本当に素晴らしいことだったんだって。
それに水戸は『Make Value Project(MVP)』など、さまざまなサッカー外のアプローチをしてくれるので、中断期間に自分がサッカーをやり続けている意味をじっくり考えることができたし、自分を見つめ直すことができた。それを通して今まで見えなかった人の顔が見えるようになって、自分はいろんな人に支えられてサッカーができているんだ、ピッチに立つ責任ってこういうことなんだと学ぶことができた。そういう部分を含めて今は純粋にサッカーに向き合えています」
実は今年の3月にも、彼にインタビューをする機会があった。その時、彼の話の中に「マリノス」という言葉がたくさん出てきた。もちろん彼は覚悟を持って水戸にやってきたことは間違いないのだが、言葉の端々に「マリノスの選手である自分」が見え隠れした。だが、群馬戦の彼のプレーは完全に水戸ホーリーホックの選手としての誇り高き姿を見せていた。