マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
湯浅大は健大高崎時代から守備名人。
坂本勇人と競うよりはいっそ……。
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byKyodo News
posted2020/06/26 07:00
3年目の20歳で開幕一軍はもちろん順調。しかし湯浅大のポテンシャルはそんなものではないはずだ。
スピードと“おとぼけ感”の見事さ。
湯浅が打球を追うのではない。ゴロのほうから湯浅にすり寄ってくるように見える打球の合わせ方。
シートノックから始まって実戦の最後まで、一塁送球も併殺プレーも、カットプレーのロングのスローイングに至るまで、すべてストライクスロー。
二盗阻止で高く抜けてしまった捕手の送球をジャンプ一番、グラブを放り投げるようにして捕球すると、それだけじゃない。滑り込んでくるランナーの足元にちゃんと下りてくるから、捕手のスローイングミスもアウトに持ち込む。
ランナーが二塁に進むとまた面白い。深く守ってノーマークのふりをしておいて、一転センター方向に大きめにふくらみながら、二塁ベース真後ろから入って牽制球でランナーを刺す時の、アッと驚くスピードと“おとぼけ感”のメリハリの見事さ。
このショートにしかできない、文字通りの「パフォーマンス」を何度も楽しませてもらったものだ。
バッティングはちょっと心配していた。
そんなスーパーショート・湯浅大がプロ3年目のこの春、ちょっと心配していた「バッティング」で台頭してきたから、またまた驚いた。
1年目のイースタンは打率0.133。2年目の昨シーズンは0.240と一気に数字を伸ばしたとはいえ、あくまで「ファーム」でのことだ。
練習試合が再開された6月7~10日の3試合で、10打数6安打7打点のなんと6割。ホームランも2本放って、中でもヤクルト期待の左腕・高橋奎二から東京ドームのレフト上段に放り込んだ一弾などは、打った瞬間! の大アーチだったと聞いている。
二、三塁の二塁ランナーになると、すぐさま大きなリードをとって牽制球をもらい、三塁ランナーのホーム突入をうながす陽動作戦。当時、母校・健大高崎のスローガンだった「機動破壊」を地でいくようなアクション。動きのスピード以上に、2次リードをサッと大きくとるタイミングがすばらしかった。