マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
湯浅大は健大高崎時代から守備名人。
坂本勇人と競うよりはいっそ……。
posted2020/06/26 07:00
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph by
Kyodo News
6月19日、開幕戦の東京ドーム、巨人阪神戦。
巨人の7回の攻撃で、先頭の代打・石川慎吾がライト前に弾き返して無死一塁を作る。
ここで投手・菅野智之の代打に、プロ3年目の内野手・湯浅大(20歳・172cm70kg・右投右打・健大高崎高)が起用された。
1点リードされて終盤7回なら、死んでも進めろ! のプレッシャーMAXの場面だ。
送りバントなら、田中俊太に北村拓己……アマチュア時代から場数を踏んだ先輩たちも控えていたはず。そこで「湯浅」なのだから、この一軍初体験のハタチの若者、よほどベンチの信頼を得ているのだろう。
リリーフ代わりばなの左腕・岩崎優から、ピシャリときめてみせた送りバントが見事だった。
右ヒザを地面につけるほど低く構えると、バットと目を同じ高さにしてボールを殺した。ミートポイントと顔面がすぐそこの、王道の送りバントだ。
足のある石川が二塁に進んで、左腕・岩崎のセットポジションの視野から消える。背中のモヤモヤ感が打者に対する集中力を半減させたのか、4球続けた「内角」の4球目がわずかに中に入ったところを、1番・吉川尚輝が絶妙のバットさばきでライトスタンドに持っていった。
高校1年から守備は抜群だった。
この逆転弾でそのまま3-2で逃げ切り、まず開幕戦で「先手」を奪った巨人。
時間をかけずに「1死二塁」を作り、攻めにスピード感と勢いを加えた湯浅大の「つなぎ」は、間違いなく殊勲の働きだった。
湯浅大の野球上手ぶりは高校入学前から耳にしていたが、実際、1年秋から健大高崎のレギュラーとしてのプレーを見た時は驚いた。
とりわけ、そのフィールディングだ。高校生であんなに上手いヤツ見たことない。打球によって自分の動きの強弱・緩急を使い分け、確かなプレーもアクロバチック系も、なんでもこなす「スーパーショート」だと驚いた。