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変わろうとする“白人社会”のMLB。
「皆と一緒に居心地の悪い会話を」
posted2020/06/25 20:00
text by
ナガオ勝司Katsushi Nagao
photograph by
AFLO
MLBで数少ない黒人の幹部職員であるホワイトソックスのケニー・ウイリアムス副社長は6月15日、チームがリリースしたビデオの中で、こう語った。
「(南北戦争時の)奴隷制度の撤廃がそうであったように、黒人だけで人種差別は解消できない。我々には、白人がそうすることが必要なんだ」
それはミネアポリスで起きた警官による黒人男性の殺害事件をきっかけに起こった全米規模の抗議運動に関連した、MLBの反応のひとつだった。
ウイリアムス副社長がそう言ったのは、彼がNBA(バスケットボール)やNFL(アメリカン・フットボール)ではなく、MLBの住人であることと無関係ではないだろう。
MLBの黒人選手は全体の8%にも満たず、NBAが全体の約80%、NFLが全体の約70%と黒人選手が大多数を占めている事実と比べると「圧倒的な少数派」だ。黒人の幹部職員もかなり少なく、MLBが「白人社会」であることを示している。
MLBで人種差別を問題にするのは難しい。
インディアンスの黒人選手デライノ・デシールズも、ESPNの取材でMLBにおける黒人の雇用状況について、こう語っている。
「アメリカで権力を持つのは白人だから、リスペクトしろと教えられて育った。(給料の)小切手を書き、プレーする機会を与えてくれる誰かをリスペクトせず、『分かった。私をリスペクトしないなら、私のチームには欲しくない』と思われるのは、怖いことなんだ」
だから、MLBでは人種差別に抗議して国歌斉唱中に片膝をついたNFLのコリン・キャパニックや、彼に同調した選手たちのようなシンボリックな黒人選手は現れなかった。
野球界で唯一、当時アスレチックスで勇気ある行動を取ったブルース・マックスウェルも、誰も同調する者がいなかったことで孤立してしまったのだ(同調しなかったデシールズは、今では後悔していると明かしている)。