メジャーリーグPRESSBACK NUMBER
変わろうとする“白人社会”のMLB。
「皆と一緒に居心地の悪い会話を」
text by
ナガオ勝司Katsushi Nagao
photograph byAFLO
posted2020/06/25 20:00
インディアンスのデライノ・デシールズも、MLBで人種問題に言及することに躊躇を感じていたと告白した。
白人ばかりを雇ってきた、という告白。
カブスの編成本部長で白人のセオ・エプスタインは、「自分と似たような人々ばかりを雇ってきた」と自らの過去を告白しながら、冒頭に登場したウイリアムス副社長に連絡を取って、MLBにおける黒人の雇用機会を拡大する変革について話し合ったという。
居心地の悪い会話を始めたのは選手も同じで、その一環として、黒人選手(引退した選手や、オリックスのアダム・ジョーンズらを含む61人)が、今回の抗議運動を象徴する「Black Lives Matter」を支持するビデオを作成し、すでにSNSを通じて拡散されている。
参加者の1人であるカブスのジェイソン・ヘイワード外野手は6月16日、ニュース専門局のCNNにネット出演して、こう説明した。
「もうこれ以上、(自分たちの立場を)心配せず、自分たちのコミュニティーのために話していくべきだと思いました」
番組のホストであるドン・レモンは黒人で、かつて同じ番組の中で現職の大統領を「人種差別主義者だ」と糾弾した勇気ある人だ。
物事の裏側を冷静に見ているジャーナリストであり、彼はヘイワードのコメントを聞いて「あなたたちが自らの声で話してくれていることに感謝する」と言いながらも、番組で共演していたカーティス・グランダーソン(元タイガースほか)に、こう質問している。
「MLBは今月初めの声明で『人種差別に対処するために野球と社会の両方で必要な行動、そして変化することを約束する』と発表しました。 そのために彼らが何かをする計画を聞いたことがありますか?」
カブスが表明した「End Racism」。
グランダーソンは「今はまだ何も」と正直に答えると、その真っ直ぐな質問は、ヘイワードにも向けられた。
「抗議運動の渦中、カブスはリグリーフィールド(外の電光掲示板)に『END RACISM(人種差別を終わらせよう)』というメッセージを流しました。チームやチームメイトから何か言われましたか?」
ヘイワードは冷静にこう答えた。
「数多くのチームメイトが連絡をくれたし、ドクターや広報など、日常的にこのゲームに関わっている人々も彼らの考えを示してくれた。
ひとつの組織として、彼らがポジティブな行動をしたいということを教えてくれたのです。それらのことは、彼らが(何らかの計画を準備している)最中だと感じさせてくれる」