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大坂なおみが“市場価値”の頂点に。
年収40億円の評価と先人が拓いた道。
text by
山口奈緒美Naomi Yamaguchi
photograph byGetty Images
posted2020/05/30 11:50
フォーブス誌の“稼ぐ女性アスリートNo.1”となった大坂なおみ。破格の金額には驚かされたが、彼女の価値、魅力に世界が気づいている証拠だ。
セリーナの実績と大坂の可能性。
23回のグランドスラム優勝(シングルス)を誇り、史上最高の女子選手とも謳われる38歳のセリーナは、結婚して母となった今もメジャータイトルが期待される実力で、アメリカの強い女性、強い母親のシンボルとして、特別な存在感を増している。
グランドスラムの史上最多記録にあと1つと迫ったところで長く足踏みしているが、たとえこのまま大記録を達成できなかったとしても、セリーナが20年以上のキャリアで成し遂げたことは圧倒的な意味を持って後世に残る。
一方の大坂への評価は、すでに成し遂げたものではなく<可能性>だったに違いない。若さに加え、あのマネージャーが確信をもって“予言”したように、日本とハイチとアメリカにバックグラウンドを持ち、ユニークで愛されるキャラクターを備えた大坂はグローバルな規模で多くのスポンサーを獲得した。
現在のスポンサー15社のうち11社との契約は全米オープン優勝後に交わされたものだが、新しい時代を築くオーラを大坂に見たからだろう。
女子テニスの歩みと無関係ではない。
同時に忘れてならないのは、今回明らかになった大坂に対する破格の<値段>は本人の実力や魅力とは別に、女子テニスの歩みと無関係ではないということだ。
『フォーブス』がアスリートの年収ランキングの発表を始めたのは1990年。以来、女子のトップの座はテニス選手が独占し続けてきた。10~11カ月ものワールドツアーを戦うテニスプレーヤーをサポートすることは、広告効果が大きい。
また、テニスが男女同権のフロントランナーとして、たとえば早くから賞金の同額化を目指して戦ってきた成果ともいえる。グランドスラム全大会で男女の賞金が完全に同額化されたのは2007年だが、全米オープンでは早くも1973年には同額を実現していたし、随分時間が経ったが、2001年には全豪オープンがあとを追った。