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大坂なおみが“市場価値”の頂点に。
年収40億円の評価と先人が拓いた道。
text by
山口奈緒美Naomi Yamaguchi
photograph byGetty Images
posted2020/05/30 11:50
フォーブス誌の“稼ぐ女性アスリートNo.1”となった大坂なおみ。破格の金額には驚かされたが、彼女の価値、魅力に世界が気づいている証拠だ。
グラフにセレス、ヒンギス、シャラポワ。
'90年代はシュテフィ・グラフ、モニカ・セレス、マルティナ・ヒンギスといった、ときの女王たちが収入でもトップを獲得し、2002年以降はセリーナとビーナスのウィリアムズ姉妹、そしてシャラポワの時代となる。
特に2005年から2015年まで11年もの間、テニスの好不調やランキングに関係なく年収のトップだったシャラポワが、華やかで美しい女子テニスのイメージを構築した貢献ははかりしれない。実際、シャラポワは18歳にしてそれまでのトップの額を易々と1.5倍となる1820万ドルを稼ぎ、それをほぼ毎年のように更新。前述したように最高で2970万ドルに達した。
ドーピング違反の発覚を潮目にシャラポワ時代は終わり、30代半ばにしてグランドスラム優勝回数を伸ばし続けるセリーナが再び女子テニスの顔になった。過去約20年の間に、特にセリーナとシャラポワが女子テニスに残したものは偉大だ。
2人の女王と魅力的なライバルたちによって高まった女子テニス人気は、男女の賞金同額の気運を高め、スポンサー企業の関心を常に集めてきた。
「女子テニスの歴史を変える選手に」
大坂はその歴史の恩恵を自力で最大限にもぎ取ったが、女子テニスに何かを残すのはこれからだろう。大坂自身、グランドスラム優勝を叶え、世界ナンバーワンになる夢も果たしてからは、「女子テニスの歴史を変えるような選手になりたい」と何度か口にしてきた。
浮き沈みの激しい昨シーズンを経て、正念場であり期待も大きかった2020年がこうしてツアー停止状態になり、22歳が刻む歴史の続きを見られないことは残念でしかたがない。『世界でもっとも稼ぐ女子アスリート』という目の眩むような称号の証を見せてくれる時間の訪れを、今は待つばかりだ。