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イタリアでサッカーは特別なのか?
コロナ禍で思い出すサッキの名言。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byGetty Images
posted2020/05/29 11:30
トレーニング場に車で現れたクリスティアーノ・ロナウド。イタリアでサッカーは特別なのか。その議論は続きそうだ。
スポーツ界に禍根を残してほしくない。
綺麗事ではなく生きていくには貨幣が必要で、個人・団体を問わず為政者へ支援を請うことの重要性も、経済装置としてのサッカーが他の競技と一線を画していることも誰もが理解している。
サッカー好きの1人として、セリエA再開がスポーツ界に禍根を残してほしくないが、現在進行中のウイルスとの戦争下にあって、100%の正解は誰にも出せない。
イタリアはサッカーの国だ。
バレーの国でもあり、バスケの国でもある。
いや、連盟登録の3000人くらいは水上パワーボートの国だと言い張るだろうし、ペッレグリーニは競泳の国だと言うだろう。
イタリア最速スプリンターの熱弁。
今月4日、ロックダウンから再始動したアスリートの1人に、21歳のフィリッポ・トルトゥもいた。
一昨年、トルトゥは史上初100mを10秒以下で走ったイタリア人となった。東京五輪を心待ちにする彼は、過去に日本へ遠征したとき、人々のマスク姿を見て「変な国だなあ」と思ったらしい。でも「今はイタリアでもそうだよね」と伊紙インタビューで笑った。
「セリエAは再開されるべきだと僕は思います」
イタリア最速のスプリンターは熱弁する。
「僕はサッカーが好きで根っからのユベンティーノです。子供の頃はFWでならしました。(ウサイン・)ボルトは間違いなく僕より速いけど、サッカーなら僕の方が上手いはず(笑)。そうそう、(ラツィオの)マヌエル・ラッザーリは足が速いらしいですね。一度100mで勝負できないかな」
あどけない顔だが、トルトゥの本職は財務省管轄の財務警備隊隊員だ。イタリアという国にとって何が大事かはわきまえている。
「昔、アリゴ・サッキが言ってましたよね。『決して大事じゃないものの中で一番大事なもの、それがサッカーだ』って。僕もそう思うんです」