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イタリアでサッカーは特別なのか?
コロナ禍で思い出すサッキの名言。
posted2020/05/29 11:30
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph by
Getty Images
セリエAは再開されるべきか否か――。
COVID-19(新型コロナウイルス感染症)により3万2000人余の命が奪われたイタリアが割れている。6月中旬に見込まれているセリエA再開を巡り、この国で当然とされてきた“サッカーへの特別視”が揺らいでいる。
ロックダウン中の4月中旬、練習活動の解禁時期が不透明だった頃にイタリア競泳界の第一人者、フェデリカ・ペッレグリーニの発言が波紋を呼んだ。
「スポーツ活動再開について報道されたり話題になったりするのはサッカーばかり。他の競技だって、ちゃんとあるんですけど」
ペッレグリーニは2004年のアテネ大会から続けて4度の五輪に出場して、200m自由形で金メダル1つ(北京大会)と銀メダル1つ(アテネ大会)の実績を持ち、2016年のリオ五輪ではイタリア選手団の旗手も務めた女傑アスリートだ。
今年8月で32歳になるが、昨年の世界選手権でも200m自由形を制すなど実力は今なお衰え知らず。来年に延期された東京五輪への意欲も旺盛で、国内スポーツ界のオピニオンリーダーでもあるから、あらゆる競技は同格に扱われるべき、という彼女のメッセージに同調したスポーツ関係者は少なくない。
セリエAと五輪委の対立が深刻化。
新型コロナウイルスによって最も被害を受けた国の1つであるイタリアでは、3月11日の全国的都市封鎖開始直後に浮かび上がった「FIGC(伊サッカー連盟)とセリエAリーグ機構vs.CONI(伊オリンピック委員会)」という対立構造が深刻化している。
CONI(イタリア・オリンピック委員会)のジョバンニ・マラゴー会長はセリエA再開に難色を示すどころか、はっきり反対姿勢を表明してきた。同会長は5月22日のラジオ番組のインタビューでも改めてサッカー界を批判している。
「サッカーのセリエAは自分勝手すぎる。イタリアにはハンドボールからアメフト、バスケットやラグビーに至るまで約15のチーム競技があるが、今回の惨禍によって、そのうち14競技が今季リーグ戦を中止した。リーグを続行しようとしているのはサッカーだけだ。
サッカーは関心や利害が大きすぎるから特別? よろしい。ならば、優勝目前だったのにリーグ中止によりタイトルを断念せざるを得なかったビルトゥス・ボローニャ(男子バスケット)やプロセッコ(水球)といったチームに面と向かって言ってみたまえ」