有能なセッターがいれば、強くなる。

　そういえば、以前、楢崎はこんなことを話していた。ボルダリングで日本勢が世界で活躍できる理由を“課題がいいから”だと。世界一選手層が厚いと言われる日本のスポーツクライミング界。セッターの意識も技術も必然的に高まる。

「セッターの人たちがすごく（課題を）考えてくれているので」（楢崎）

　選手がセッターを、セッターが選手を育ててきた。

　日本は東京オリンピックでメダルを有力視されている。選手にとってはもちろんだが、セッターとして参加する岡野にとってもオリンピックは真剣勝負の舞台だ。

「僕がクライミングを始めた当初は周囲でやっている人はあまりいませんでした。でも、今はスポーツクライミングをする方が増え、楽しさを分かってもらえるようになりました。それは本当に喜ばしいこと。だからこそ、オリンピックは必ず成功させたい。見て楽しんでいただけるような、エキサイトするようなルートを東京でお見せしたいです」

　第一人者はさらなる技術の向上はもちろん、ルートセッターの地位確立にも力を注ぐ。