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女子プロゴルファーとJリーガーが
ユーチューバーになってみたら……。
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph bySports Graphic Number
posted2020/05/24 11:50
「李忠成/Tadanari Lee」初めて公開したのは2020年3月25日。
「大会に行きたいな、と思ってもらえたら」
一再生あたりの収入0.1円程度が目安とされるYouTubeの世界。収益はまだかわいらしいものだが、成田にはチャンネルを開設した当初から、YouTubeで得た収入で自身の似顔絵やパーソナルマークが入ったオリジナルグッズをつくり、大会を見に来てくれたファンにプレゼントするというプランがある。
「YouTubeを見た人に、グッズをもらえるなら大会に行きたいな、と思ってもらえたら良いですね」
今季のツアーは3月5日から始まる予定だったが、6月下旬の1大会を除き18試合の中止が決まっている。そのため現在は、千葉県の自宅に車庫を改造してつくった50平方メートルほどの練習場で午前中にトレーニングをし、午後は動画編集や部屋の片付け、料理などをする毎日だ。
「目標のない練習ほどつらいものはないので、私はゆったり楽な感じで毎日を過ごしています。経験上、ネガティブになっても絶対に良いことはないと分かっていますからね。普段からプラスに思うことだけを感じてマイナスのことは無視するようにしていますし、そういう考えはゴルフにも通じるんですよ」
YouTube企画の左打ちで気づいたことが右手の技術に生かされることもあるとのことで、「大変なんですが自分のゴルフにも還元されているので楽しくやれています」と笑顔を見せている。
乾貴士や原口元気も登場する豪華なチャンネル!
3月25日に「李忠成/Tadanari Lee」を立ち上げたのは、元サッカー日本代表で、優勝した11年アジアカップで決勝ゴールを決めている李忠成(京都サンガ)だ。
ツイッターのフォロワー数は7万、インスタは6万。YouTubeは5月22日現在のチャンネル登録者数が約1万6000人で、毎日じわじわと増えているところだ。
外出自粛が叫ばれていた時期のチャンネル開設という意味では成田と同じだが、李の場合は構想を持ち始めたのは約1年半前だった。
「サッカー選手の価値を形にしたい」との思いから、1年をかけてクリエーターを探し、さらには動画編集者もつけてというパッケージを構築。いわば満を持してのスタートだ。
動画の主な内容は、国内外で活躍するサッカー選手との対談。これまでに乾貴士(スペイン・エイバル)や原口元気(ドイツ・ハノーファー)、李がかつて所属したサンフレッチェ広島のメンバーたちなどが登場している。
ここで印象的なのが、ホスト役を務める李が対談する相手の思いを非常にうまく掘り下げ、引き出していることだ。ときには李が別の言葉に置き換えて視聴者によりわかりやすく伝えている場面もある。
考えてみれば、李は取材される側であるときも言い得て妙な表現や、キャッチーな言葉遣いをする優れたインタビュイーである。李自身は、「やってみて感じているのはMCの難しさ。全然できていない」と謙遜するが、インタビュアーとしてもかなりのポテンシャルがあるのは間違いない。