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申ジエの凄みと渋野日向子の思いやり。
全英女子で究極の緊張からの、笑顔。 

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南しずか

南しずかShizuka Minami

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photograph byGetty Images

posted2020/05/07 07:30

申ジエの凄みと渋野日向子の思いやり。全英女子で究極の緊張からの、笑顔。<Number Web> photograph by Getty Images

2012年全英女子オープン最終日。18番ホール第3打目を考える申ジエ。ロイヤル・リバプールGCは真っ赤な夕日が差し込んでいた。

申とはまた違った笑顔だった渋野。

 申とは種類が違う笑顔だが、昨年の全英女子の渋野日向子にも衝撃を受けた。

 選手が試合中の自身の好プレーに思わず笑みが溢れるというのは当然のことである。渋野も、良いショットを打ったり、長いパットを決めれば笑顔が弾けた。

 だが、渋野はそれだけではなかった。

 次のホールへの移動中に観客と笑顔でハイタッチを交わし、ギャラリーの男の子から「グローブ欲しい」とねだられたら「無視できない」と即座にサインして渡す。プレー中の待ち時間に駄菓子を頬張りながら、テレビカメラに目線を向ける。

 渋野の笑顔は、ギャラリーと一緒に盛り上がるという“思いやりの笑顔”だった。

申も渋野も「笑顔」が大事!

 最終日18番のウイニングパットを決めてガッツポーズすると、最高潮にギャラリーが沸いた。この去年の「全英女子最終日のハイライト」の動画は、米女子ツアー史上最高の再生回数を記録したという。明るくて親しみやすいニューヒロインの笑顔に、国籍問わずファンの心は鷲掴みにされたのだ。

 メジャー制覇の翌日、渋野はイギリスでメディア取材に応じた。人見知りをすることなく誰とでも平等に接する様子から、普段から常識と思いやりがあることが窺い知れた。「笑顔は世界共通」と渋野は言っていた。

 そんな渋野の言葉を今回の取材で申に伝えると、すぐに同意して「笑顔には希望もあるしね!」と答えてくれた。

 メジャーという最高峰の真剣勝負において、笑う余裕がある2人の、そのハートの強さにつくづく恐れ入った。

「勝者2人の笑顔」を思い出して……自宅にこもって原稿を書きながら、また痺れる試合が見れる日がいつか来るといいなと願う今日この頃である。

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