リーガ・エスパニョーラ最前線BACK NUMBER
19歳のメッシによる伝説の5人抜き。
カンプ・ノウに揺れた白いハンカチ。
text by
横井伸幸Nobuyuki Yokoi
photograph byGetty Images
posted2020/05/06 20:00
相手マーカーに複数人寄せられてもボールを奪われず、ゴールを奪う。今では見慣れたメッシのプレーだが、10代にして見せたそれは衝撃的だった。
シャビからのパスを受けて先制点。
シャビからパスを受けたメッシが敵を3人引きつけ、ペナルティエリア内へ走り込んだシャビにボールを返すと、見事なコントロールからシュート。スタンドだけでなくピッチの空気も変わった。
安堵したバルサは、そこから圧力を高める。デビュー3シーズン目のメッシは20代後半の脂が乗ったアタッカーのごとく振る舞い始めた。
そして28分、あのゴールが生まれた。
再びシャビから、メッシの12秒弱。
右サイドライン際、センターラインから自陣に数m入ったところでメッシがシャビからパスを受けた。
間髪をいれずヘタフェのパレデスがファウル覚悟で足を出す。が、かわされる。そこを狙ったナチョは足の間にボールを通され、いなされる。
メッシはヘタフェゴールへ向けて一直線にボールを運んだ。
パレデスとナチョが懸命に追いかけるが届かない。
ペナルティエリアの外で進路を断とうとしてきたアレクシスをメッシは左にかわした。足をすくうようなスライディングを仕掛けてきたベレンゲールは置き去りにした。
ヘタフェ最後の砦、GKルイス・ガルシアは右にかわした。
ボールはラインを割る勢いだったが追いつき、メッシは倒れ込みながら右足でシュート。わずかに浮かされたボールはコルテスが伸ばした足の上を飛んでネットを揺らした。
動き出しからゴールが決まるまで12秒弱。
その直後はあまりの驚きに呆然としていたことを覚えている。それからチームメイトに祝福されるメッシを遠くに眺めつつ12秒弱を振り返り、彼が独走を始めたときその先が読めずに不安を覚えたことや、5人目を抜いたときボールが伸び「ムリか」と心のなかでつぶやいたことを思い出した。