オリンピックへの道BACK NUMBER
競泳エース・瀬戸大也の挫折と再起。
五輪延期で高みを目指し下した決断。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAFLO
posted2020/05/06 11:30
今年1月、日本選手団の公式服装発表会に参加し、「後悔しないように、あと半年を過ごしたい」と語っていた。
エリート街道を歩んできた選手ではない。
ただ、そのままで言葉は終わらなかった。
「これまで練習をしてきて積み上げて来たことはタイムとして証明できているので今後どうしたら今年以上にタイムを縮め、オリンピックで金メダルという夢を叶えられるか考えたいと思います。
オリンピックは自分にとって何ものにも代えがたい夢の舞台です」
瀬戸は決してエリート街道まっしぐらに歩んできた選手ではない。
2012年、目標としていたロンドン五輪代表には入ることはできなかった。その失意を経て、再起。武者修行のように国内外の大会に出場し続け、たくましさを身につけていった。
念願のオリンピック出場となった2016年のリオデジャネイロ五輪では、400m個人メドレーで銅メダルを手にした。
「本気だからこそこの表情だと感じられた」
ただ、目標としていた世界一には至らなかった。メダルを獲ったうれしさよりも、悔しさがあった。
試合を終えて、感じたことがあった。
「表彰台に上がった選手たちの表情をたくさん見ました。勝った人の笑顔、負けた人の不満そうな顔、いろいろあったけれど、どれも、本気だからこそこの表情だと感じられた。
そのとき、『あ、そうだ、本気で夢を追いかけてきたから、それも4年間をかけて、ずっと努力してきたからなんだ』と気づいた」
だから本気で金メダルを追いかけてきた。
その成果が表れたのが、昨年の世界選手権だ。まぎれもなく、世界一を争う位置へと、自身の努力で自らを押し上げていた。
だが、目標の舞台は先へと押しやられた。失意は、当然のことだ。