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浦和の「引き立て役」はもう御免だ。
ガンバACL雪辱劇と勝負師・西野朗。
text by
下薗昌記Masaki Shimozono
photograph byAFLO
posted2020/04/26 20:00
2006、07年と屈してきた浦和にリベンジ。西野ガンバは2008年ACL準決勝で大入りの埼玉スタジアムを黙らせることに成功した。
第2レグ前半、明らかに劣勢だった。
第2レグから遡ること2週間前の10月8日、万博記念競技場で行われた第1レグは1対1のドロー。勝利か2点以上を奪ってのドローならば、ガンバ初の決勝進出が決まるものの、立ち上がりから明らかに硬さが見られ、劣勢を強いられた。
36分にはクリアミスを拾った高原直泰に先制ゴールを献上。そして、42分にも高原の強烈なシュートがクロスバーを直撃する。勝負ごとに「たられば」がないのは承知しているが、あの一撃が決まっていれば、ACLの歴史の1ページは確実に書き換わっていたはずだ。
辛うじて徳俵に足がかかった状態で試合を折り返した「引き立て役」だったが、他ならぬ指揮官は冷静だった。大会直後、西野監督に行ったインタビューで試合中の心境を聞かせてもらったことがある。
「確かに少しずつレッズに流れが傾いていたし、前半の4分の3ぐらいはレッズペースだと僕も感じていた。でも、1対1にすればひっくり返せると選手には伝えた」
流れを一変させた西野采配と遠藤。
後半は「勝負師、西野」の真骨頂とも言える45分間だった。
日頃はクールな西野監督がライバル心をむき出しにする相手が浦和レッズ。準々決勝のアルカラマ(シリア)戦後、「準決勝でレッズとやりたいという気持ちで挑んだ」と話したほど、西野監督も「打倒浦和」に強い思いを抱いていたのだ。
明らかに劣勢だった前半の流れを一変させたのは、その西野采配だった。前半用いた4-4-2のフォーメーションを後半から4-5-1にスイッチ。切り札だった佐々木勇人を右ワイドに起用すると、佐々木が得たCKから後半6分、同点ゴールが生まれた。
遠藤保仁のピンポイントキックを滞空時間の長いヘディングで合わせた山口智がゲット。後半28分にはやはりCKから明神がニアサイドで合わせて、試合をひっくり返すのだ。
そして、アウェイゴール2点を奪われ明らかに意気消沈した感がある宿敵に、引導を渡したのが大黒柱の遠藤だった。