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ジェラード悪夢のスリップから6年。
リバプールに再び不運、それでも。
text by
三重野翔大Shodai Mieno
photograph byGetty Images
posted2020/04/27 11:30
ジェラードが肩を落とす姿には、多くのフットボールファンが心を痛めた。偉大な主将の無念を晴らす機会をクロップ・リバプールは得られるか。
圧倒的にポゼッションしたのに。
アディショナルタイムに入った48分、サコからの横パスをコントロールミスしたスティーブン・ジェラードが慌てて踏み込んだ瞬間、芝に足を取られて転倒した。
近くでプレスの準備をしていたバは、流れたボールを拾ってゴールに向かって一直線。最終ラインで致命的なミスを犯してしまったため、サコとマルティン・シュクルテル、両センターバックのカバーは間に合わず、思わぬ形で先制を許してしまった。
終始ボールを保持していたリバプールにとっては想定外の失点だったかもしれない。後半はさらにボールポゼッションを高め攻勢に出るも、前半に増して自陣で引いたチェルシーの牙城を崩すことはできなかった。後半アディショナルタイムに、カウンターからウィリアンに決められて0-2。優勝に向けた大一番を落としてしまった。
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最終的なボールポゼッション率は73%。幾度となく決定機を演出したリバプールだが、逆転勝利への執念を一番燃やしていたのはやはりあの男だった。
英サッカー分析メディア『Whoscored.com』によると、シュート数はチェルシーの11本に対しリバプールは26本だが、両軍トップとなる9本のシュートを放ったのはジェラード。さらに、うち8本が後半に放ったものであり、前半終了間際のミスを挽回しようと必死になっていたことがうかがえる。
翌節も3-0から立て続けに3失点。
その思いも届かず無念の敗戦を喫したリバプール。思いの外そのダメージは大きく、翌節のクリスタルパレス戦にも結果として表れてしまった。
ジョー・アレン、オウンゴール、ルイス・スアレスのゴールで3-0としたものの、79分から立て続けに3失点。1失点目となるダミアン・ディレイニーのミドルシュートが決まってからの守備陣は全くと言っていいほど機能せず、明らかにそれまでの自信に揺らぎがみえた。
これでマンチェスター・Cを勝ち点2差で追う形で最終節を迎えることになった。リバプールはニューカッスル、シティはウェストハムとのホームゲーム。ともに下馬評通りの結果となり、シティが2季ぶりのリーグ制覇を達成した。
事実上の終戦はクリスタルパレス戦後といってもいいかもしれない。それでもあのチェルシー戦が、あのミスが今でもレッズファンにとってショッキングな記憶として残っているのは、ミスの当事者が他ならぬスティーブン・ジェラードだったからだ。