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オシム、コロナ禍の欧州から魂の言葉。
「私はまだ働きたい。ジェフの……」 

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田村修一

田村修一Shuichi Tamura

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posted2020/04/22 11:50

オシム、コロナ禍の欧州から魂の言葉。「私はまだ働きたい。ジェフの……」<Number Web> photograph by Getty Images

オーストリアのクラブ、シュトルム・グラーツには今もオシム伝説が残る。グラーツの観客席の垂れ幕には今もオシムの顔と名前が……。

「国家元首は慎重に選ばねばならない」

「日本はどんな具合なのか? 天皇陛下はつつがなく過ごされているのか? あるいは総理大臣は? とにかくみなが健康であるのが第一だ。そうでないと心配で、トランプのようになってしまう。それはそれで問題だがね(笑)。彼の言葉は最終的に全世界に影響を与えるから。

 国家元首は慎重に選ばねばならない。アメリカやロシアの大統領、日本の首相もだ。中国の総書記は、投票では選べないが……。

 彼らには強大な力がある。武力もある。彼らが愚かなことをしたら、相手も報復措置に出る。戦争の危機さえ生じかねない。全面戦争の危機だ。

 私が驚くのは、アメリカのような国の大統領が、他国の国家元首を選ぶことができると考えていることだ。例えばイランやトルコ、ウクライナといった国々を武力で屈服させながら、それをなそうとする。とても危険なことだ。

 ここ(ボスニアから離れて滞在しているオーストリア)での問題はと言うと、日常的な社会生活のすべてが規制されてしまっている、ということだ。

 オーストリアでは、どこも警官がコントロールしている。通常の日常生活からはほど遠い。人々は移動を制限されているから、旅行会社は壊滅的な打撃だ。イタリアやギリシャなど、観光立国の打撃はより深刻だろう。以前はロンドンやパリ、ローマにも東京と同じぐらい日本人が溢れていたが、今はもうほとんど見かけない」

――それは日本も同じですね。

「起こっている事態に比べたらスポーツは重要ではない」

「すでに様々な問題が生じている。だが現状は多くの選択肢があるわけではない。すべてが制限されている。

 しかし君たちには常に何かがある。欧州と比べて日本にはまだ余裕があるのではないか。これは、どう言えばいいか……何か言葉を見つけるのが難しいが。こんな事態なので、多くのことに関心を抱けるわけではないが……よく食べてよく飲みよく眠る。それだけで素晴らしいと思える静かな生活、それが大事だろう。パンデミックによる最初の政治的な混乱は少し落ち着いたが、政治家たちにはコロナは彼らよりも強大であることを理解して欲しい。

 今、起こっている事態に比べたら、スポーツはさほど重要ではない。大事なのは子供たちであり、そこに暮らす人々だ。だからこそ、これからどうして暮らしていけばいいのかを真剣に考えたいと思っている。

 この世界に起こるすべての出来事は、最初は困難でもやがては克服される。いつかはこの状況も変わっていく。だからこそ希望を持ち続ける。奇跡を期待しがちだが、コロナは本当に危険だ。ただのウィルスの蔓延ではない。もっとずっと複雑な事態だ。

 まだまだ多くの人々が深刻に考えていないかも知れない。ウィルスは大したことがなく、すぐに収まるだろうしこのまま生活していけると。だが現実は違う。とてもではないが楽観視はできない。もうすぐ収まるだろうと高をくくっていたらとんでもないことになりかねない。

 日本のみなさんも十分に気をつけて過ごして欲しい。このウィルスの災いをなんとかうまくやり過ごして、あまり無茶はしないように暮らして欲しい」

【次ページ】 「ジェフのような“自分の人生のクラブ”で」

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