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ハンド界期待の部井久アダム勇樹。
石川祐希に倣う欧州移籍と急成長。 

text by

石井宏美

石井宏美Hiromi Ishii

PROFILE

photograph byAFLO

posted2020/04/21 11:00

ハンド界期待の部井久アダム勇樹。石川祐希に倣う欧州移籍と急成長。<Number Web> photograph by AFLO

パキスタン人の父を持つ部井久アダム勇樹。博多高校時代から日本代表に選出されるなど、ハンドボール界の期待の星だ。

中大の強化選手制度でフランスへ。

 部井久も石川のように、積極的な海外での活動を応援する大学の強化選手制度を利用し、大学入学と同時に欧州へと渡り、海外挑戦をスタートさせた。 

 2018年から始まった海外生活だが、基本は7月末からシーズンの終わりである翌年の5月末までを海外で過ごしている。その間、全日本学生選手権出場時は一時帰国し、大会後には再びフランスへ。日本代表の合宿や遠征にも同様に参加してきた。

 実業団が中心の国内とは異なり、周りがプロ選手ばかりの本場での毎日は、部井久に選手としての未熟さを気付かせる大きなきっかけとなった。

「日本ではこれくらいの身長(195cm)の選手のなかでは動けるほうで、それが武器になっていました。でも僕は高さや能力に頼りすぎていたんです。それだけでは通用しないことを痛感しましたし、正確な判断やシュートに行くまでの動きをもっと磨かなければいけないと気づかされました」

「僕らとは背負っているものが違う」

 プレー面以上に、世界と自分、そして世界と日本の違いをまざまざと感じさせられたのは、ハンドボールに懸ける思いだったという。

「もちろん日本の選手も勝ちたい一心で必死にプレーしています。ただ、向こうはプロで、結果が出なければ生活ができないシビアな環境でプレーしている。決して日本が甘いというわけではないのですが、僕らとは背負っているものが1つも2つも違うな、と。練習中から互いに競争する意識が高く、プレーも激しかったですね」

 刺激だらけの毎日に、必死にくらいついていった。ここでなら必ずレベルアップできると信じて。

 求められるシュートに行くまでの動きやプレーの判断力。日々試行錯誤を繰り返すなかで、代表に入っても癖が抜けなかったという無駄打ちも徐々に改善し、打つべき場面でシュートを打てるようになった。試合の流れを読む力も徐々にレベルアップしている手応えも掴んだ。何よりも技術やパワー、スピードの差以上に、勝利への執着心が勝敗を左右することを体感し、取り組む姿勢が変わってきた。

【次ページ】 監督も実感する部井久の成長。

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