変身後、一気に頂点まで駆け上がった男。

　延長10回の死闘を制した履正社は、そのまま甲子園まで進んだ。

　甲子園では初戦の2回戦で天理と対戦。相手には、小・中学校時代から同地区で有名だった中村奨吾（ロッテ）がいたが、その天理にも競り勝ち、山田の評価は一気に高まった。

　同年のドラフトで外れの外れだったとはいえ、ヤクルトの1位指名を受けた。吉川はもとより、山田の高校入学当時から近畿地区の評判選手の1人だった西川遥輝（日本ハム）より先に名前を読み上げられる評価の上がりぶりだ。

　プロ入団後は1年目のクライマックスシリーズでデビューを果たすと、そこから飛ぶ鳥を落とす勢いでのぼりきっていった。同学年の後藤駿太（オリックス）が「同期で山田だけがいつの間にか遠くの方まで行った」と語っていたもことがあったが、それほど山田は一息つく間もなく、そして、後ろを振り返ることなく階段を駆け上がっていった印象だ。

「あれだけの伸びを示した高校生を見たことがない」

　そんな山田について岡田は、やはり驚きしかないとこう語っている。

「氷山の一角という言葉がありますけど、少しだけ頭を出しているけど、その下にどれだけのものが埋もれているのかは分からない。しかし、意欲を持ったことでそれが一気に見えるところに浮上することがある。

　山田の成長スピードはホンマにすごい勢いでした。あれだけの伸びを示した高校生を見たことがありません」

　高校2年の秋に見た山田のことは、筆者も鮮明に覚えている。

　正直にいって、「どこにでもいそうなショート」だった。背丈や持っていたポテンシャルを考えれば、「いつかはプロに行ける選手かもしれないなぁ」というぐらいだった。

　まさか、これほどの大記録を打ち立てる選手になるとは想像できなかった。

　将来予測を一気に飛び超えた「成長率ナンバー1」。

　これほど一気に才能が開花した選手は、山田以外に見当たらない。