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伊藤華英「私は5年かかりました」
今こそ選手と社会人の両立を。
text by
伊藤華英Hanae Ito
photograph byAFLO
posted2020/04/16 11:40
東京オリンピック延期という大きなアクシデントにどう対応するかこそが、スポーツの本来的な価値を証明することになるのだ。
五輪アスリートがフルタイム看護師に?
そういう選手の中には、今回の東京オリンピック延期でこれまでの計画が全てなくなってしまった選手が多くいると思う。
しかし世界には、医学部を休学してオリンピックを目指していた選手もいるし、オーストラリアのホッケー選手レイチェル・リンチ選手は世界的な医療従事者不足に応じて看護師としてフル稼働しているそうだ。
彼女は東京2020大会の金メダルを目指していたオーストラリア代表の主力GKであり、以前から週1日のペースで看護師として働いていた。そして現在は、目標をオリンピックの金メダルから新型コロナウイルスの終息にシフトして、医療現場でフルタイムで働く決断をしたのだ。
今こそ、社会を生きる1人として。
彼女は、「東京オリンピックが延期されたけれど、落ち込んでいる場合ではない。この社会全体のもっと重要な闘争に全力を注げて嬉しい」とコメントし、最後に“Sports is such a wonderful thing in that way”とした。
目の前にあった大きな目標が延期になり、愕然とする気持ちはわかる。しかし今こそ、この社会を生きる「人」として何ができるかを改めて考える時なのだと思う。
1つのことに真剣に取り組んできたアスリートには、それができる力があると信じている。