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全米中がお祭り騒ぎになった4月16日。
ジョーダンとブルズが残した伝説とは?
text by
宮地陽子Yoko Miyaji
photograph byGetty Images
posted2020/04/16 07:00
偉大なる記録を達成した直後、コート脇で取材攻めにあうマイケル・ジョーダン。優勝を目指す彼の目に、油断の色は無い。
まるでロイヤル・ウェディングのような……。
この前のシーズン終盤に、マイケル・ジョーダンが1年半の引退から現役復帰したことで、このシーズンのブルズは全米どこにいっても熱狂的なファンに追いかけられていた。
SNSもなく今ほど情報の伝達が速くなかった時代だったが、チームが移動した先には、常に大勢のブルズ・ファンが待ち構えていた。
この日のシカゴからミルウォーキーへの道も、言ってみればスーパースターの凱旋、あるいはロイヤル・ウェディングのような雰囲気だったのだ。
あれから24年がたち、その間にはコービー・ブライアントやステフィン・カリー、レブロン・ジェームズなど、多くのスーパースターを見てきたが、あのシーズンのジョーダンに対するファンの熱狂は、今から振り返っても一種独特だったと思う。
一度引退して、もう2度と見られないと思っていたジョーダンのプレーをまた見られるようになり、その奇跡に人々は熱狂していた。
優勝しなければ72勝10敗には何の意味もない。
肝心の試合はといえば、試合前後の盛り上がりと比べると、すばらしいとはいいがたかった。
自分たちの目の前で歴史を達成させたくなかったバックスが捨て身で戦ってきたため接戦にはなったが、ブルズはオフェンスがかみ合わず、シュートも決まらず、このシーズン低迷していたバックス相手に大苦戦。
試合終盤にディフェンスを引き締めたことで、ようやく86対80と低得点の試合を制して70勝目をあげた。
試合後にジョーダンはこう語っていた。
「(70勝を達成して)ほっとしたというのが正直な気持ちだ。これがどういう意味をもつのか、本当に理解できるまでには時間がかかると思う。
僕らはチャンピオンになるために戦っているわけで、70勝することをあまり重要視したくない。優勝した後に振り返って考えると70勝も大きな意味をもつと思う。でも、今は70勝といっても、シーズン中に達成できたことのひとつにすぎないんだ」
この後72勝10敗でレギュラーシーズンを終えたブルズ選手たちが、プレイオフを前に、「優勝しなければ72勝10敗には何の意味もない」と書かれたTシャツを着ていたのを覚えている。
レギュラーシーズンの記録を喜びすぎないようにと戒める、チーム内のスローガンだった。
結局、この年のブルズはプレイオフに入ってからも圧倒的な強さを見せ、危なげなく優勝している。72勝のブルズは、今でもNBA史上最強チーム、あるいは最強チームのひとつと言われている。