サムライブルーの原材料BACK NUMBER
サッカー人生で一番の試練を越えて。
細貝萌、タイで感じる充実と喜び。
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byTrue Bangkok United
posted2020/04/14 20:00
昨季、タイのブリーラム・ユナイテッドに移籍した細貝。今季はバンコク・ユナイテッドに期限付き移籍をしている。
同じ1986年生まれで、元々好きだった。
ある選手とは?
細貝に尋ねると、なるほどと思えた。対人の強さではこの人の右に出る者はいないであろうレアル・マドリーのセルヒオ・ラモス。同じ1986年生まれで、元々好きだったという。センターバック目線でサッカーを眺めてみると、何だか胸が熱くなっていった。
「ボランチはガツガツ行って、たとえ相手に入れ替わられたとしても基本的にはセンターバックがいてくれる。でもセンターバックは入れ替わった時点でGKと1対1になってしまう。こういった対応の仕方は参考になるし、そのなかでも激しさを忘れないところが何より惹かれる。
センターバックは欧州でも少しやりましたけど、今やってみて凄く面白いなって感じています。新型コロナウイルスの影響で今、試合はできていないけど、今シーズンは凄く充実してできているなって感じていますね」
「もうやめてもいいんじゃないかって」
充実。
シーズンの始めから、この言葉を聞いたのはここ数年にはなかったことだ。
タイに来る前に「サッカー人生を終わりにする」ことも考えていた。若手が多い柏レイソルに自分の経験を伝えることができればと思い日本へ戻ってきたが、思うように出場機会を得ることができない状況は苦しくて仕方がなかった。
「ヘルタ(・ベルリン)では調子が良くてもベンチ外が続いてストレス性発疹で入院したこともありました。でもサッカーをやめようとまでは思わなかった。
日本に戻って、自分の置かれた状況を考えたときに、年齢を考えたときに、もうやめてもいいんじゃないかって。ただ今になって思うのは、やめなくてよかった、と。辛抱してきたから今があるというのは凄く感じています」