サムライブルーの原材料BACK NUMBER
サッカー人生で一番の試練を越えて。
細貝萌、タイで感じる充実と喜び。
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byTrue Bangkok United
posted2020/04/14 20:00
昨季、タイのブリーラム・ユナイテッドに移籍した細貝。今季はバンコク・ユナイテッドに期限付き移籍をしている。
「サッカー人生で一番の試練」を乗り越えた。
苦しんでいたときにタイのブリーラムからオファーがあった。もう一度、サッカーと向き合うために、移籍を決断した。もう一度、日本を離れることを選択した。
だが彼はここで大きな苦難に直面する。正式契約を交わした後、体が本調子ではないと感じる日が続いていた。
病院で検査を受け、その原因も分かったという。もちろんクラブにもきちんと報告を済ませている。プライベートな案件でもあり、対外的には「体調不良」とのみ伝えられた。
一時、体重は7kgほど落ちたという。筋肉も細くなり、気持ちもめげそうになった。だがクラブの協力と、家族の支えがあって「自分のサッカー人生で一番の試練」を乗り越えていく。チームへの合流が遅れながらも急ピッチでコンディションを仕上げ、3月から試合に出続けた。
今シーズンは期限付き移籍でバンコクに渡り、最初からチームづくりに関わることができている。それはサッカー選手にとって当たり前のことかもしれない。小さなことかもしれない。それでも、小さな喜びの連続が大きな充実を彼にもたらしている。
「サッカーができる日がいつか来ることを信じて」
タイ・リーグ1は新型コロナウイルスの感染拡大によって4月中旬の再開予定も5月2日にずれ込んだ。状況次第では再延期になる可能性も十分にある。
細貝自身、Zoomによるオンライン上でのチームのフィジカルトレーニングや、自宅ではバイクを使った有酸素運動や筋トレなどで朝から体をしっかりと動かしている。
「こうやって家族と一緒に長くいる時間は増えているので、それは幸せにも感じています。一番は人々の命です。そしていつかウイルスが終息して、サッカーができる日がいつか来ることを信じて、自分がやるべきことをやっていきたい。世界にいるサッカー仲間たちに負けないように、毎日を充実させていきたいですね」
世界は、つながっている。
希望も、つながっている。
バンコク発、細貝萌の充実に「負けてられない」と刺激されるサッカー仲間もいるに違いない。いつか世界にサッカーが戻ってくることを信じて――。