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山田直輝、湘南へ完全移籍した本心。
10番の自覚と、浦和の18番への謝罪。
text by
杉園昌之Masayuki Sugizono
photograph byGetty Images
posted2020/03/10 08:00
今季開幕戦で古巣・浦和からゴールを奪った湘南・山田直輝。志願して得た「10番」を背負って戦いに臨む。
10番は「逃げ道をなくす意味も」
今季、「期限付き」の4文字が消えた。プロ12年目を迎えて、初めての完全移籍。昨季に続き、背番号は10。重みは理解している。自らにプレッシャーをかける意味合いもある。
「特別な番号です。ナンバー10を背負って、チームの力になれないようではダメでしょ。ピッチで頼られる10番になりたい」
18歳で日本代表デビューを飾り、将来を嘱望されてきたプレーメーカーも、今年の7月で30歳を迎える。度重なるケガに悩まされた時期もある。浦和時代は期限付き移籍でチームを2度離れたが、湘南では覚悟を決めている。
「自分の心が少し弱くなったり、逃げ出しそうになったとき、背中の10番を見れば、もう一度自分と向き合える。逃げ道をなくす意味もあります」
リセットする選択肢もあったはずだ。
湘南への恩義は、片時も忘れたことはない。トレードマークの笑顔と輝きを失いかけていた時期に加入し、2015年から'17年まで曹貴裁前監督に心身ともに鍛え直してもらった。昨季途中で移籍を選んだ理由の1つは、恩師の指導を仰ぎたかったからだ。
しかし、思いを寄せた指揮官と一緒に戦ったのは、昨年8月の2試合のみ。その直後、パワーハラスメント問題が発覚し、指導自粛の期間が続き、10月には監督を退任。山田にとっては想定外だった。昨季終盤は残留争いに巻き込まれ、指導体制も変わった。シーズンオフには選手の顔ぶれも変化。山田自身、選手人生を一度リセットする選択肢もあったはずだ。
しかし、すぐに首を横に振る。心は揺らがなかった。向上心にあふれる湘南の空気は、何ひとつ変わっていなかったからだ。
「曹さんがいなくなっても、このチームの雰囲気が好きだし、ここの選手たちが好きなんです。湘南は僕を輝かせてくれます。そのクラブのために、何としても貢献したいという思いが強い」