球体とリズムBACK NUMBER
無双リバプールに不具合発生?
南野拓実は“停滞”を払拭できるか。
posted2020/03/04 20:30
text by
井川洋一Yoichi Igawa
photograph by
Getty Images
ほんの少し前まで無双を誇った“魅惑の赤いマシン”(Irresistible Red Machine)に不具合が続いている。
ユルゲン・クロップ監督の率いるリバプールは、昨季に念願のチャンピオンズリーグ優勝を果たし、今季はクラブW杯も制して、欧州と世界の頂点に立った。そして今季のプレミアリーグでは直近のワトフォード戦を迎える前まで、27試合26勝1分と驚異的なペースで首位を独走。そんな彼らに、2003-04シーズンにアーセナルが成し遂げた無敗優勝の再現を期待する声も聞かれていた。
だからアーセン・ベンゲルが統率した“無敵の集団”(Invinsibles)にも似たニックネームがついていたわけだが、ここにきてレッズの勢いに陰りが見え始めている。
まずチャンピオンズリーグのラウンド16第1戦で、アトレティコ・マドリーに敵地で0-1と敗北。直後のプレミアリーグでは降格圏に沈むウェストハムにホームで3-2と競り勝ったものの、一度は逆転される苦しい展開だった。そして先週末のワトフォードとのアウェー戦は、0-3と完敗している。
狂った歯車は簡単には戻らない。
そんな状況でリバプールを本拠地に迎えることとなったチェルシーのフランク・ランパード監督は、このFAカップ5回戦の前にこう話した。
「彼らは1試合だけ、(赤いマシンから)ちょっと人間に戻っただけじゃないかな。とてつもなく競争力の激しいプレミアリーグでは、そんなこと(ひとつの敗北)も起こりうる」
しかしながら、赤いマシンはこの日もいたるところで油を切らし、ギシギシと車体をきしませていた。強豪チェルシーとの一戦に、これまでのFAカップとは異なり、約半数のレギュラーが先発に名を連ねたものの、狂った歯車は簡単には戻らない。序盤こそ、移籍後3度目のスタメン──すべてFAカップだ──を飾った南野拓実のハイプレスやスルーパスからチャンスを迎えそうになったが、徐々にスピーディな相手の攻撃に後退を余儀なくされ始める。
そして13分、ボックス右からのウィリアンの強烈なシュートを、一度はGKアドリアンがセーブするも、直後の低い位置からのパス回しでファビーニョがミス。これをさらわれ、再びウィリアンが鋭いミドルを放つと、今度はアドリアンが弾ききれず、チェルシーが先制した。