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モズアスコットの「二刀流」が完成。
ルメールも驚くフェブラリー完勝劇。 

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島田明宏

島田明宏Akihiro Shimada

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photograph byYuji Takahashi

posted2020/02/25 11:30

モズアスコットの「二刀流」が完成。ルメールも驚くフェブラリー完勝劇。<Number Web> photograph by Yuji Takahashi

芝からダートに完璧に適応したモズアスコット。狙えるレースが増え、今後の走りが楽しみだ。

一気に抜き去り、そのまま独走。

 しかし、ルメールは慌てなかった。モズアスコットの手応えが、彼に余裕を持たせたのだろう。

「直線ではいい脚で加速した。速さがすごくてびっくりしました」

 ラスト400m。馬場の真ん中で伸びあぐねるインティを内から瞬時に抜き去り、前を走るタイムフライヤーの外に持ち出した。

 ラスト200m地点で、タイムフライヤーを並ぶ間もなくかわし、独走態勢に。

 ケイティブレイブとサンライズノヴァが外から追い上げてきたが、ルメールは振り返ってそれらとの差を確認すると、最後は見せ鞭で気を抜かないようにし、流すようにゴールを駆け抜けた。結局、直線で入れたステッキは3発だけだった。

 ダート2戦目のGIで豪快な末脚を繰り出し、2馬身半差で完勝。イーグルカフェ、クロフネ、アグネスデジタル、アドマイヤドンにつづく、JRA史上5頭目の芝・ダート両GI制覇をなし遂げ、堂々「二刀流王者」の座についた。

「根岸ステークスから、モズアスコットは新しい馬になりました。ダートで、また強い馬になった。血統(母系)にダート馬がいるし、ダートのセンスがある。矢作先生はいいチョイスをしました」

 そう話したルメールは、9回目の参戦にしてついにフェブラリーステークスを制した。そして、これがこの日の6勝目だった。

「逆に緊張」するほどの好状態。

 前走の根岸ステークスから馬の状態が格段によくなっていた。矢作調教師はこう言う。

「休み明けがいい馬ではないし、根岸ステークスのときは馬が硬かった。それなのに、出遅れて、あの強い競馬でしょう。すべてが好転した今回は自信がありました。それだけに、逆に緊張もしましたね」

 そう言って笑顔を見せた矢作調教師は、リスグラシューによる昨年の有馬記念、コントレイルによるホープフルステークスにつづく、管理馬によるJRA・GI実施機会3連勝を達成した。1984年のグレード制導入以降、2004年の松田国英調教師(キングカメハメハによるNHKマイルカップ、ダイワエルシエーロによるオークス、キングカメハメハによる日本ダービー)につづく2人目の快挙である。

「ちょうどよく駒が揃った、ということでしょうか。うちは忙しい厩舎で、出走数が多いのに、スタッフが万全の仕事をしてくれているからだと思います」

【次ページ】 世界的な種牡馬になるために。

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モズアスコット
クリストフ・ルメール

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