リーガ・エスパニョーラ最前線BACK NUMBER
再建請負人アギーレとアベラルド。
降格圏脱出には戦術より気配り。
text by
横井伸幸Nobuyuki Yokoi
photograph byGetty Images
posted2020/02/22 11:30
日本代表監督を去って5年、ハビエル・アギーレはラ・リーガでまたも苦境のチームを救いつつある。
技術や戦術ばかりだけでなく。
だから、様子がおかしい選手を見つけたら、声をかける。膝を気にしているようならば「具合はどうだ」と尋ね、ピリピリした雰囲気を感じたら不満に耳を貸す。尻を叩くべきと判断したらしっかり叩き、人参が必要と感じたら鼻先にぶら下げる。
「練習では技術的なことや戦術的なことだけでなく、そういった点にも気を配らねばならない。選手は監督の思いやりや心遣いを感じ取り、後にピッチの上で全力を尽くすことで謝意を示してくれるからだ」
アベラルドもまた結束を固める名手。
レガネスに代わって最下位に落ちたエスパニョールを、昨年12月27日から率いているアベラルド・フェルナンデスも、危機的状況に置かれたチームの力を引き出すのが巧い。
監督歴が浅いこともあって残留達成は2017-18シーズンのアラベス(第13節の時点で最下位を14位に)のみだが、2014-15シーズンには財政的理由で補強禁止のペナルティを科されていたスポルティングで、2部から1部への昇格を成し遂げている。
彼が目標達成の手段としているのも、やはり選手の精神面の管理だ。
アラベスでも、まずはチーム全員がクラブ施設で朝食と昼食をとることをルール化した。
「俺たちは、最終的にレストランでの夕食の席をも共にするようになった。アベラルドはチームの結束を固めることに成功したんだ。彼一流の技だ」
今季もアラベスで活躍しているセンターバックのビクトル・ラグアルディアは、常に選手の近くにいた前監督との思い出を口にする。アベラルドが誰もがチームの一員であることを実感できる空気を作り上げたことで、選手は練習へ行くことを楽しんでいたという。
「戦術的に新しいことはやらなかったし、選手の心を動かすスピーチもしなかった。でも、彼のおかげで俺たちは再び自負心を持ち、心を強くすることができた」