フランス・フットボール通信BACK NUMBER
「死のグループ」の王者フランスが、
EURO2020で優勝できる4つの理由。
text by
オリビエ・ボサール&デーブ・アパドゥーOlivier Bossard et Dave Appadoo
photograph byBernard Papon/L'Equipe
posted2020/02/24 20:00
極めて合理的な思考でチーム作りをすることで定評あるディディエ・デシャン監督。クジ運の悪さを、試合で取り返せるか。
理由その1:充実した選手層。
フランス代表のスタメンは、ほぼすべてがヨーロッパのトップクラブの選手で占められている。その充実ぶりは他の追随を許さないことを、デシャンもよくわかっている。
ゴールキーパーはCLのファイナリスト(ユーゴ・ロリス=トッテナム・ホットスパー)で、両サイドバックはバイエルン・ミュンヘン(バンジャマン・パバールとルーカス・エルナンデス)に、センターバックはラファエル・バランがレアル・マドリー、クレマン・ラングレとサミュエル・ウムティティはバルセロナの所属である。
中盤はプレミア(エンゴロ・カンテがチェルシー、ポール・ポグバがマンチェスター・ユナイテッド)とセリエA(ブレイズ・マテュイディがユベントス)のトップクラブの選手たちで、前線にはパリ・サンジェルマン(キリアン・ムバッペ)とバルセロナ(アントワン・グリーズマン)のストライカーが並ぶ。
唯一例外ともいえるのがオリビエ・ジルーで、いまだチェルシーに所属するものの出番は大きく減っている。
これだけのメンバーを揃えるフランスは、幾つかのセクション(とりわけセンターバック)に弱点のあるイングランドや、サイドが不安定なうえに守備的ミッドフィールダーにも不安を抱えるベルギーを抑えて、ブックメイカーの賭け率も第1位となっている。
グループ全体のポテンシャルで、フランスを上回る国はどこにも見あたらないのである。
理由その2:フランスはフレッシュな状態で大会に臨める
この点についてばかりは「ピンチよありがとう」と言いたい。
いったいどういうことか?
今季、多くの代表選手が厳しいシーズンを送っている。そのことがデシャンには逆に有利に働きうるからである。
これまでもワールドカップやEUROなどの大きな大会に充実した陣容で臨みながら、長いシーズンの後で主力が疲弊していたために、悲惨な結果に終わったことが幾度かあった。
2002年の日韓ワールドカップがそうで、このときフランスは3つの主要リーグの得点王を揃えていた(プレミア得点王のティエリー・アンリとセリエA得点王のダビド・トレゼゲ、リーグ・アン得点王のジブリル・シセ)うえに、ジネディーヌ・ジダンはグラスゴーでおこなわれたCL決勝で記憶に残るボレーシュートを決めて欧州チャンピオンに輝いたばかりだった。
選手の疲労に加え、直前のテストマッチ(韓国戦)で無理をおして出場したジダンが負傷してしまったフランスは、優勝候補の筆頭でありながらグループリーグで1勝もできずに韓国を去らねばならなかったのだ。