フランス・フットボール通信BACK NUMBER
「死のグループ」の王者フランスが、
EURO2020で優勝できる4つの理由。
text by
オリビエ・ボサール&デーブ・アパドゥーOlivier Bossard et Dave Appadoo
photograph byBernard Papon/L'Equipe
posted2020/02/24 20:00
極めて合理的な思考でチーム作りをすることで定評あるディディエ・デシャン監督。クジ運の悪さを、試合で取り返せるか。
疲れ切っていたシャビ、イニエスタ。
2014年のブラジルワールドカップに臨んだスペインも同様である。
シャビ、イニエスタをはじめとする主力選手たちは、クラブと代表での6年にも及ぶトップレベルでの戦いに疲れ切り、オランダとチリに連敗して早々にグループリーグ敗退が決まったのだった。
翻って今回のフランスはどうか。ロリスをはじめエルナンデス、ポグバ、デンベレ、トバン、デュブワ……さらにはムバッペやカンテまで怪我を繰り返してシーズンをフルに戦ってはいない。また「幸いなことに」、ジルーばかりかグリーズマンもベンチを温めることが多く、チーム全体がフレッシュな状態で大会を迎えられるのだ。
理由その3:監督がディディエ・デシャン。
チームがフレッシュな状態であるのは、選手たちが実戦不足であり試合勘が戻っていない不安と表裏一体でもある。
その弱点を補いうるのがデシャン監督の経験値である。
クラブに関しては、誰が世界で最も優れた監督であるのか――クロップなのかグアルディオラか、モウリーニョか、ジダンかといった議論がよくなされるが、代表監督ではそれはごく稀である。そしてデシャンはといえば、EUROとワールドカップで連続して決勝に進んだという点で、間違いなくトップのひとりであると言える。
彼以上の実績を残しているのは、ヨアヒム・レーブぐらいしかいないのだから。
まずデシャンには最高のグループを作り得る術がある(それは必ずしも最高の選手たちによるグループを意味しない)。
そしてそのグループを、2カ月間スムーズに維持できる方法も心得ている。
さらに彼は、チームのフィジカルのピークを、ラウンド16に向けて持っていくことができる。そのためのグループリーグの戦い方も熟知しており、戦術面では素材の良さを最大限に生かしたシステムを構築する。そのためにはEURO2016ラウンド16のアイルランド戦のように、4-4-2でグリーズマンをトップに起用することもあれば、ロシアワールドカップのペルー戦のように、マテュイディを中盤左サイドで起用することもあった。
もしかしたらデシャンこそが、フランスの最大の武器であるのかもしれない。