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筒香移籍後の外野争いに名乗り。
DeNA関根大気は「今日を楽しむ」。
posted2020/02/21 11:40
text by
日比野恭三Kyozo Hibino
photograph by
Asami Enomoto
オープン戦の季節がやってきた。
長いオフを経て、ようやく「試合」が見られる。公式戦でなくても、野球に飢えたファンの視線は熱を帯びる。
選手にとっては、開幕時点での自らの立ち位置を決める重要な見せ場だ。「調整の場」と割り切ってオープン戦に臨める選手は、ほんのひと握りだろう。多くは、ここで首脳陣にアピールしてライバルに差をつけ、自身が望む立場に一歩でも近づきたい――そう意気込んでいるはずだ。
ベイスターズにおいても、レギュラーを確約された選手は数少なく、ほとんどのポジションで競争の最中だ。とりわけ、レフトを守ってきた筒香嘉智が抜け、新外国人や有望な若手などが鎬を削る外野は、レギュラー争いのホットスポットと言える。
関根に期待してしまう何か。
昨シーズン82試合に1番打者として先発出場した神里和毅をセンターに、新主将かつ新4番候補の佐野恵太と、ヤンキースなどでプレーした新加入のオースティンを両翼に置くのが、ひとまず現時点で最も有力な開幕の布陣だろうか。むろん予断は許されず、復活を期す梶谷隆幸や、乙坂智、桑原将志、細川成也、楠本泰史らも虎視眈々とポジション奪取を狙っている。
筒香の穴を埋めようと考えるなら、前述の通り、長打力のある佐野や、オープン戦初戦で2打席連続ホームランをかっ飛ばしたオースティンが本命であり、彼らがその役を務め得るのかに注目するのが自然だろう。
だが、オープン戦をアピールの場と考えたとき、筆者が最も注目したいと思う選手はほかにいる。
高卒での入団から7年目になる、関根大気だ。
近年の状況は、端的に言って厳しい。俊足と打撃センスを兼ね備える有望株でありながらも、強打者が占める外野陣の競争になかなか割って入れず、代走や守備固めでの起用が中心。昨シーズンは一軍で32試合に出場したが、スタメンはわずか3試合に留まった。
それでも関根には、どうしても期待してしまう何かがある。「このままで終わるはずがない」と信じているファンが一定数いることは、キャンプ地に背番号63のユニフォームを着て集う人の多さを見てもわかる。スピード豊かに颯爽と駆ける姿は、ファンの夢をいまも膨らませる。