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筒香移籍後の外野争いに名乗り。
DeNA関根大気は「今日を楽しむ」。 

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日比野恭三

日比野恭三Kyozo Hibino

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photograph byAsami Enomoto

posted2020/02/21 11:40

筒香移籍後の外野争いに名乗り。DeNA関根大気は「今日を楽しむ」。<Number Web> photograph by Asami Enomoto

筒香の穴を埋める選手の台頭が待たれるDeNA。熾烈なレギュラー争いにも「楽しむ」姿勢を貫く関根に期待してしまう。

野球以外の時間もちゃんとつくる。

 意外だし驚いている、と素直に伝えた。3年前のコラムは2016年の秋季キャンプでの取材をもとに書いたものだが、そこでも「2月後半からのオープン戦で結果を残すことがすべて」「(レギュラーを)奪うなら2017年しかない。そこで奪い取らないと、ぼくは終わってしまう」とのコメントを紹介した。それほどまでの覚悟を持って、ストイックに野球に向き合っていた……。

 関根は小さくうなずく。

「それでもよかったんですけど、自己満足だったのかもしれませんね。そうするしかなかった、というか」

 そして、現在の心のありようをこう説明した。

「いままでは野球に生きてきました。野球のために生きていた。それが大事だといまも思ってますけど、野球は真剣にやりながら、ご飯を食べに行ったり、野球以外の時間もちゃんとつくる。そうじゃないと、一日の終わりに『今日はどうだったかな』と考えたとき、笑えないので。楽しい時間をいっぱいつくっています」

 変化の要因として考えられるのは、昨オフ、メキシコに滞在し、ウィンターリーグでプレーしたことだ。中南米の価値観に触れ、野球を、人生を楽しむことの大切さにあらためて気づいたという話を、ほかの選手から聞いたこともある。

 ところが、関根は首を横に振りつつ言う。

遊ぶ、楽しむぐらいのイメージ。

「もう7年目。自分の人生をどうしたいか、大きく考えるようになりました。メキシコに行かせてもらったのも、それだけの短期間で野球がうまくなるとはあまり考えていなかった。自分の人生で、2カ月半、海外で生活できる経験はなかなかない。その中でいろいろなことを学びたい気持ちが強くて、『行きたいです』と(球団に)言いました」

 ちょうど1年前、春季キャンプの最中にケガをしてしまったことは、今年のキャンプの過ごし方に影響を及ぼしている。

 野球だけを見て、自らを厳しく律しながら生き、それでもその熱心さが故障という形で裏目に出てはあまりにむなしい。

「今年は“詰め詰め”にしないように。プレイする、(日本語に訳せば)遊ぶ、野球を楽しむ、ぐらいのイメージですね」

 白い歯を見せながら、関根は左の拳を突き出した。

「だから毎日、こうやってグータッチしましょうね。アミーゴですから」

 タッチを交わし「行ってきます」と言い残して、グラウンドの中に去って行った。

【次ページ】 楽しむ伏兵がかっさらう未来。

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