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筒香移籍後の外野争いに名乗り。
DeNA関根大気は「今日を楽しむ」。
text by
日比野恭三Kyozo Hibino
photograph byAsami Enomoto
posted2020/02/21 11:40
筒香の穴を埋める選手の台頭が待たれるDeNA。熾烈なレギュラー争いにも「楽しむ」姿勢を貫く関根に期待してしまう。
紅白戦で見せた積極的なプレー。
今年の春季キャンプもファームからのスタートだった関根がきらめきを見せたのが、2月8日に行われた紅白戦だった。初回、いきなりツーベースを放つと、思い切りよく三盗を成功させた。
昨シーズン12球団最少の40盗塁に終わったベイスターズにとって「足」は補強したいポイントのひとつ。積極果敢な姿勢で持ち味のスピードを示した関根は、翌9日から一軍への合流を果たした。
筆者にとっての関根は、いわゆる「意識が高い」選手の代表格だった。もう3年前のことだが、「生きていくために野球をやっているというより、野球をするために生きている」とコラムに書いた。背筋を伸ばし取材に応じる、そのときの視線はいつもどこか遠くを見ているようだった。
自分に厳しい求道者が7年目のシーズンに懸ける思いの強さは生半可なものではあるまい。紅白戦での積極プレーは、その証に違いないと思っていた。だからこそ、オープン戦でのさらなるアピールが楽しみになったのだ。
一軍がキャンプを張る沖縄・宜野湾で、関根に声をかけた。
「ゆっくり歩きながら話しましょう」
室内練習場からメイン球場へと移動する間、サングラスをかけた若者はにこやかに取材に応じてくれた。
「アピールする気ないです」
紅白戦でアピールしようという気持ちが強く窺えたことをまず伝え、「オープン戦でも同様にアピールしたいところですね」と半ば同意を求めるような口ぶりで尋ねた。すると、関根は意外そうな表情を浮かべた。
「ほんとですか? なんか、おもしろいですね……。ぼくは、まったくアピールする気ないです」
予想だにしない答えだった。
この一言だけではない。その後も、時折早口になりながら、かつての関根とは別人ではないかと思えるような言葉を綿々と連ねた。
「オープン戦がある、みんな『アピールしよう』と言いますよね。でもぼくは『今日も野球を楽しもう』って思うんです。こないだの紅白戦も、行っちゃう(気持ちが先走ってしまう)じゃないですか。そのときに『今日は楽しむことでしょ』って自分に言い聞かせて。その結果、ヒットも打てたし、盗塁もできた。積極的なものが出せた」
とにもかくにも「楽しむ」。その表現を何度も繰り返した。