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大流血2冠防衛の生傷男・内藤哲也。
弟子・高橋ヒロムとの対決への思い。
posted2020/02/16 19:00
text by
原悦生Essei Hara
photograph by
Essei Hara
試合の翌日、内藤哲也の額の真ん中にはホチキスが8つタテに並んでいた。その下は前夜に病院で縫ったという6センチほどの傷がある。まだ、少し血がにじんでいる。
流血が興奮剤のような役目を果たしたのかもしれない。内藤はKENTAののらりくらりした戦術に長い時間静かだったが、KENTAよってコーナーのターンバックルが取り除かれてむき出しになったロープと鉄柱をつなぐ金具に頭をぶち当てられて血を流した。
その血の量は多く、すぐに内藤の顔面のほとんどを覆ってしまった。だが、奮起した内藤は旋回式のDDTであるデスティーノから、KENTAをフォールした。
「内藤哲也がうまく料理してあげますよ」
内藤のIWGPヘビー級王座とインターコンチネンタル王座にKENTAが挑戦した試合は、2月9日に満員の大阪城ホールで行われた。
最初の5分間は互いにまったく組み合うこともなく時間だけが経過していった。35分余を戦ったが、試合そのものは決して面白いものではなかった。「(KENTAが)リングにさえ上がってくれさえすれば、内藤哲也がうまく料理してあげますよ」と自信たっぷりに語っていた内藤だったが、料理はできたが、ファンが満足するテイストには仕上がらなかったと思う。少なくとも、筆者にとっては物足りなかった。
「ちょっとでもチャンスがあれば入り込んでやろうっていうKENTAのそういう姿勢、オレは好きだよ。他の新日本の選手は危機感持ったほうがいいよ。彼みたいな大バッシングを受けたとしても、ああやって行動に出る。オレは本当にすばらしいことだと思うよ。それにそういう覚悟も試合で伝わってきたしね」(内藤)
KENTAの気持ちは痛いほど伝わって来たと言って、ある種のリスペクトを示した内藤だが、その内藤とKENTAの双方の意思とは別に1カ月以上に渡った抗争は一段落したように見える。