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大流血2冠防衛の生傷男・内藤哲也。
弟子・高橋ヒロムとの対決への思い。
text by
原悦生Essei Hara
photograph byEssei Hara
posted2020/02/16 19:00
KENTAをの次は高橋ヒロムと対戦……内藤哲也の本当の狙いはなんだ?
「IWGPヘビー級王座への挑戦の権利証をください」
高橋は内藤の持つIWGPヘビー級王座に興味を示している。2月2日の札幌でもヘビーのベルトに触れたし、9日の大阪でもインターコンチネンタルではなくヘビーのベルトだけを見つめていた。
3月3日の大田区総合体育館の「旗揚げ記念日」(新日本プロレスの旗揚げは1972年3月6日)のメインイベントで内藤と高橋の対戦が決まったが、これはIWGPヘビー級王者とジュニア・ヘビー級王者のシングルという恒例化しつつあるパターンの1つに過ぎない。
タイトルをかけてもいいという内藤の希望はかなわず、新日本プロレスはこれをノンタイトルのシングルマッチとして発表した。
でも、高橋は「(大田区での試合に)勝った場合には、来年の東京ドームでのIWGPヘビー級王座への挑戦の権利証をください」と新日本プロレスの菅林直樹会長に訴えたのだ。
通常は、この権利証はG1クライマックスの優勝者に与えられてきたが、それを「ください」と言葉は丁寧だが、実質的には「よこせ」いうものだ。
高橋はそう訴えた後、深々とお辞儀をしてその場は引き揚げたが、菅林会長は「前にもこんなことがあったな」と言った顔で笑いすましていた。これでは、高橋が軽くあしらわれた格好である。
だが、内藤とのシングル戦の結果、あるいは内容次第では新日本プロレスにもそれを考える余地はまだあるはずだ。
ジュニアヘビーを、ヘビーと並ぶステータスに。
とはいえ、高橋にはIWGPジュニアヘビー級王座を持ったまま、すぐに内藤の持つヘビー級王座に挑戦という運びにはならなくても良い、という腹づもりもあるようなのだ。つまり、その頭の中にはジュニアヘビーをヘビーと並ぶステータスまで持ち上げてメインイベントを取る、という別の野望もある、ということだ。
高橋は今年の1月5日のドーム大会でも、ジュニアヘビー級でメインを取るくらいの気持ちは十分持っていると、昨年から発言し続けていた。
「2018年7月7日。オレとドラゴン・リーは互いに全力で戦い、互いに心と身体に傷を負いました。その大きな傷が、2020年2月9日、大阪城ホールで癒えました。やっぱりやっていて楽しいな。ドラゴン・リー、最高だ」
高橋は場外のリーにコーナーポストからセントーンを放って5メートルの落差で背中からぶち当たってファンの度肝を抜いた。だがこの試合の後、高橋はリーとの危険と楽しさを併せ持つ戦いには2年間のブレイクを置きたいと明言した。この2年の間に……高橋は別の目的、つまりIWGPヘビー級王座というステイタスへの挑戦をするつもりなのかもしれない。