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大流血2冠防衛の生傷男・内藤哲也。
弟子・高橋ヒロムとの対決への思い。
text by
原悦生Essei Hara
photograph byEssei Hara
posted2020/02/16 19:00
KENTAをの次は高橋ヒロムと対戦……内藤哲也の本当の狙いはなんだ?
「絶対、現状を打破してやるんだ」という思い。
内藤は高橋を海外に送りだしたころのことを感慨深げに語った。
「当時、ボクはまだロス・インゴベルナブレス・デ・ハポンと出会ってないですし、全国各地でブーイングをお客様からいただいていた時期です。『帰って来た時にシングルマッチをやろう。その時までにオレは新日本のトップに立っているからな』と。それは自分へのプレッシャーだったと同時に、やっぱり海外遠征って選手にとって、もしかしたらキャリアの中で一番のチャンスであり、そのチャンスを生かせなかった場合、もうチャンスは訪れないかもしれないというくらい、大事な場面なんですよ」
「内藤なにやっているんだ。ちゃんとやれ」と非難の声を浴びていた時代を思い出して、ブレイクのポイントがいかに難しいかと実感するように内藤は続けた。
「だから、そのヒロムが帰ってくるまでに『絶対、現状を打破してやるんだ』っていう自分へのプレッシャーと、あとは『いい海外遠征にして結果を残して帰って来いよ』っていうヒロムへの激励。言い方があっているかわからないですけれど、ボクが育てた選手ですからね」
内藤と高橋、過去の因縁をおさらいすると……。
高橋は2013年6月からイギリスに渡った。
2014年1月からはメキシコのCMLLに移って「カマイタチ」という覆面レスラーになり、リーとの出会いがあった。当時の覆面はリーとの“マスカラ・コントラ・マスカラ(覆面剥ぎデスマッチ)”に敗れて失ったが、2016年1月にはリーからCMLL世界スーパーライト級王座を奪った。同年4月から、高橋はアメリカ・マットも経験している。
高橋はたくましく成長して2016年11月、新日本プロレスに帰って来た。そして、内藤率いる「ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポン」の一員になった。勢いに乗った高橋は2017年1月にはKUSHIDAからIWGPジュニアヘビー級王座を奪い4度防衛したが、同年6月、KUSHIDAに敗れた。
2018年6月、ベスト・オブ・ザ・スーパージュニアに優勝。同月、ウィル・オスプレイからIWGPジュニアヘビー級王座を奪いジュニアに「高橋ヒロムの時代」が来たこと感じさせた。だが、7月にアメリカで行われたリーとの防衛戦で、首の骨を折るという大アクシデントと遭遇してしまったのだ。