炎の一筆入魂BACK NUMBER
「3番は丸さんのイメージが強い」
カープで高まる西川龍馬への期待。
posted2020/02/12 11:40
text by
前原淳Jun Maehara
photograph by
Nanae Suzuki
鈴木誠也が次元の違う打撃を見せる広島春季キャンプで、もう1人、ほかの選手との違いを見せる打者がいる。トップの位置から最短距離でバットを出し、右に左に痛烈なライナーをはじき返す西川龍馬。チーム内で体は決して大きくはなく、圧倒的な存在感があるわけでもない。
ただ、ひとたびバットを握れば、周囲の視線を集める。
春季キャンプ5日目、今年初めて投手と対戦したシート打撃で快音を響かせた。遠藤淳志の初球を右翼線に痛烈にはじき返すと、その後も快音連発。いきなり異なる4投手から4打数3安打を記録した。本人は「たまたまじゃないですか」と涼しい顔も、毎年安打数を増やす安打製造機の実力を見せつけた。
朝山東洋打撃コーチは春季キャンプ前の段階でこう評価していた。
「普通にやれば数字を出すだろう。チーム力を考えると、西川が三塁に入ってくれると厚くなる。ただ、個人的には打撃のことを考えると外野の方がいいのかと思う」
打力は今や鈴木誠に次ぐ存在といっていい。
バット1本で生きていく覚悟。
ただ、広島の外野には、鈴木誠也、高い潜在能力を秘める野間峻祥、実績十分の長野久義、一塁と併用できる松山竜平、昨年のドラフトで獲得した即戦力の法大・宇草孔基ら候補選手は多い。来日後は三塁でノックを受ける新外国人のホセ・ピレラも米国では外野を主戦場にしていた。
そのため、佐々岡真司新監督は昨秋、まだ内野手登録のままだった西川に三塁再挑戦を課した。本人は戸惑ったものの、冷静に考えると有効な一手と思えた。
だが、佐々岡監督は、西川の打力を最大限に発揮する選択をした。
春季キャンプが始まる前の1月下旬、広島市内のイベントで佐々岡監督が西川の起用について「外野」と初めて明言した。
伝え聞いた西川も「そのつもりでやってきた」と表情を引き締めた。1月の日本ハム近藤健介らとの合同自主トレにも内野グラブは持参しなかった。これまで同様、バット1本で生きていく覚悟を新たにした。