球体とリズムBACK NUMBER
連続PK失敗より注目。神戸の充実と
フェルマーレンがJで学ぶ「驚き」。
text by
井川洋一Yoichi Igawa
photograph byGetty Images
posted2020/02/11 11:30
今季はリーグ、ACLとともにEUROも控えるフェルマーレン。イニエスタだけでなく世界屈指のCBのプレーも堪能したい。
J王者マリノス相手に押し込んだ。
埼玉スタジアムに5万1397人の観衆が詰めかけた注目の一戦で、神戸は序盤から横浜F・マリノスを押し込む。
昨季のJリーグを席巻したスピーディで攻撃的なスタイルを発揮させないように、高い位置から連動したプレスをかけ、相手の組織的なポゼッションを分断。特に昨季のJリーグMVP仲川輝人を擁する横浜の右サイドからの攻撃は、古橋亨梧、酒井、トーマス・フェルマーレンがスムーズに連携して防いでいた。
そして27分、アンドレス・イニエスタの魔法が先制点を導いた。左サイド前方でボールを持った35歳の元スペイン代表MFは、なぜだか誰にも止められないドリブルでボックス際まで持ち込み、相手をギリギリまで引きつけて浮き球のパスで新戦力ドウグラスの先制点をお膳立て。計算できる名より実のストライカーの加入により、今季は主将のマジックがより生かされることになりそうだ。
その後は撃ち合いとなり、マルコス・ジュニオール、古橋、扇原貴宏、山口蛍、エリキがネットを揺らした。天皇杯決勝を戦ったことにより、準備期間が短かった神戸は終盤、運動量が落ちて横浜の猛攻に晒されたが、「間延びする展開は覚悟していた」GK飯倉大樹のたびたびのセーブもあり、3-3の同点のまま勝負はPK戦へ。
古巣とのPK戦を楽しんだ飯倉。
両チームともに最初の2人が決めた後、9人連続でキックが決まらない珍事(『Jリーグデータセンター』によると、日本のトップレベルの公式戦で初の記録)があったものの、神戸の7人目の山口がシュートを沈めて勝利。これで早くも2020年におけるふたつ目の優勝を味わった。
PK戦でもふたりのキックをセーブするなど、イニエスタが勝利の立役者と名指ししたGK飯倉は「(古巣の横浜の選手たちについては)人柄なんかもわかっているから、楽しかった。オレは有利だったし、向こうは不利だったと思うよ」とにこやかに振り返った。ただし内容については、「まだまだ納得していないよね」と続ける。
「マリノスみたいにポゼッションからたくさんチャンスをつくって勝つ。そこまでいきたい。本当の意味で強くなる、というのは、もう少し先にあるのかな」