ブンデス・フットボール紀行BACK NUMBER
期待の19歳アペルカムプ真大カール。
デュッセルドルフで“その時”を待つ。
text by
島崎英純Hidezumi Shimazaki
photograph byGetty Images
posted2020/01/26 11:40
アペルカムプ真大カールにクラブがかける期待は大きい。ブンデス、さらにその先の舞台に期待したい。
「高けーけど、寿司って美味いなぁ」
試合後、メルキュール・シュピール・アレナは地下鉄Uバーン駅が隣接している影響で、スタジアム出口から駅構内まで大混雑。試合終了から1時間が経過してもホームに多くのサポーターが並んでいました。
「スタジアムから最寄り駅までの距離が近すぎるというのも、いろいろ問題が生じるものなんだなぁ」と考えながら取材仲間と電車に乗り込みデュッセルドルフ中央駅へ向かったところ、あまりに多くの乗客輸送で増便された電車が何度も停車し、結局約15分で着く道のりを延々1時間もかかったしだいです。
それでも、ドイツのサッカーファン、サポーターは陽気です。両チームのサポーターが電車内で呉越同舟。彼らはビール瓶を持ち込んでも乱闘騒ぎを起こさず、勝ったチームも負けたチームも大声ではしゃいでいます。
電車が動き出す気配を見せなくても怒り出す人はいません。「まあ、しょうがないか」とばかりに次の駅で降りて歩き始める人もいれば、車内に居残って宴を始めてしまう人もいます。「なんで止まってんのか理由だけでも教えてくんねーかな」なんて叫びながらも、声のトーンはどこか愛嬌が伴っています。
中央駅に着き、構内のアジア系の飲食店を覗いたところ、テイクアウト用のパック詰め寿司を前にした強面のフォルトナ・サポーターが呟いていました。
「高けーなぁ。でも、寿司って美味いんだよなぁ。買っちゃおうかなぁ」
日本との縁が深いデュッセルドルフを本拠地とするフォルトナでは今、日本とドイツのハーフである選手がプロデビューを果たそうと精進しています。
この街にはおそらく、アペルカムプ真大カールの活躍を願う人がいる。彼のプレーに胸を躍らせる人がいる。そんな幸せな時間が、できるだけ早く訪れることを願っています。