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期待の19歳アペルカムプ真大カール。
デュッセルドルフで“その時”を待つ。
text by
島崎英純Hidezumi Shimazaki
photograph byGetty Images
posted2020/01/26 11:40
アペルカムプ真大カールにクラブがかける期待は大きい。ブンデス、さらにその先の舞台に期待したい。
三菱養和出身のアペルカムプ。
話が飛びました。サッカーに戻りましょう。フォルトゥナは日本人選手とも関係の深いクラブです。
これまでは大前元紀(2013-2014)、金城ジャスティン俊樹(2016-2018)、原口(2018)、そして宇佐美貴史(2017-2019)らが在籍し、現在は東京都生まれで父親がドイツ人、母親が日本人のハーフであるアペルカムプ真大カールがトップチームに名を連ねています。
現在19歳のアペルカムプは三菱養和SC巣鴨ジュニアユース出身ですが、16歳の時に父親の仕事の関係でドイツへ渡りフォルトゥナの下部組織へ加入、今季はフォルトナU-23に所属しながら晴れてトップチームへ登録されました。
現在はU-23チームが所属するレギオナルリーガ(4部相当)西地区を主戦場としながら、ブンデスリーガ出場を目指しています。アペルカムプはU-17、U-18の日本代表選出歴がありますが、日本国籍とドイツ国籍を有しているために、今後は22歳までにどちらかの国籍を選択せねばなりません。
アペルカムプの登録ポジションはMF。昨季のフォルトナU-19在籍時にはU-19ブンデスリーガウエストで11得点を決めていて、主にトップ下を務めていました。
ボランチでもプレーできるようですが、アタッキングミッドフィールダーが最適だと思います。しかし今季、トップチームのフリートヘルム・フンケル監督が託そうとしているポジションは、右サイドバックです。
なぜ未知のサイドバックに転向?
フンケル監督は2016年3月からフォルトナの指揮を執り、2017-18シーズンには原口や宇佐美をレギュラーに抜擢したうえで、翌シーズンに6シーズンぶりの1部昇格を果たしました。当時のフンケル監督は主に原口を左ウイング、宇佐美を右ウイングで起用し、彼らの特性を十分理解していたようにも見えました。
しかし、アペルカムプの場合は本人にとって未知のサイドバックのポジションに据え、新たなる能力を覚醒させようとしています。
最近のドイツでは、かつてジョゼップ・グアルディオラがバイエルン・ミュンヘンを指揮した時代にダビド・アラバやフィリップ・ラームが実践した「偽サイドバック」や、現バイエルンでヨシュア・キミッヒが見せるライン際でのゲームメイクなど、サイドバックに様々なタスクを与える傾向があります。
現代型のサイドバックは4バックの一員として守備に従事したうえで、縦への突破や味方MFとのペアで局面打開を図る、本来の役割とは異なる能力が求められています。今季のブンデスリーガで最高齢の66歳となるフンケル監督が、アペルカムプに対してそんな素養を見出しているのだとすれば、非常に興味深いことです。