草茂みベースボールの道白しBACK NUMBER
与田監督も期待するゴン「サ」レス。
新外国人の表記の謎を解く鍵は……。
text by
小西斗真Toma Konishi
photograph byAFLO
posted2020/01/16 19:00
昨シーズンまでオリオールズ傘下・ノーフォークなどでプレーしたゴンサレス。身長188センチ、体重93キロの巨漢の背番号は「53」に決まった。
「オレの名前はゴンサレスだ」
「本人に電話で聞いてみたんですよ。こちらでの登録はどうする?って。ゴンサレスで頼むということでした。英語の発音だとゴンザレスになるんでしょうか。読み方の違いですね」
濁点の有無の違いは、この説明に表れている。彼らの母国語であるスペイン語の発音は「ゴンサレス」である。ところが、野球選手の多くはメジャーリーグを経由する。英語での発音は「ゴンザレス」と濁る。アメリカ経由で来日するから「ゴンザレス」となるのだろう。しかし、今回は先例にとらわれることなく、桂川通訳が労をいとわず本人の意向を確かめた。すると「オレの名前はゴンサレスだ」と濁らず発音する。よって日本球界初の「ゴンサレス」と表記される選手が誕生した。
もちろん、登録名は本名やフルネームである必要はない。
例えば2010、12年に巨人でプレーした「エドガー」もGonzalez姓だ。通算157試合で打率.253、16本塁打、63打点の成績を残した。MLBで2014年に打点王を獲得し、ゴールドグラブ賞も4度受賞したエイドリアンの実兄としても知られている。
ファーストネームで登録したエドガーに対し、同じく巨人に2007年に在籍したGeremi Gonzalezの登録名「GG」は略称、通称タイプである。理由は「ゴンザレス」ではLuisとかぶり、「ジェレミー」の名もパウエルとかぶっており、混同を避けるため。ただ、ファーストネームは「Geremi」でパウエルの「Jeremy」とは違う。スペイン語での発音は「ヘレミー」に近い。1勝2敗、防御率6.52という成績で1年限りで退団したこの右投手は、翌'08年に落雷により不運な最期を遂げている。
英語風か、スペイン語風か。
表音文字のカタカナは、外来語を可能な限り忠実に表記する。『アルプスの少女ハイジ』で、ハイジの幼なじみは「ペーター」だが、イギリス生まれの物語は『ピーターパン』となる。スポーツ界でも同様で、ボクシングのスーパースター、ロマゴン(ニカラグア人)は日本でも「ローマン・ゴンサレス」と表記され、サッカースペイン代表のスーパースターでレアル・マドリーで長らくプレーしたストライカーも「ラウール・ゴンサレス」と報道されてきた。
競技の違いが英語風の発音かスペイン語風の発音かで分かれ、濁点の有無につながる。 日本球界初となる「ゴンサレス」は、1月下旬に来日し、沖縄キャンプに合流する。マウンドでも点が無い、無失点の快投を与田監督は望んでいることだろう。