酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
山田哲人、金子侑司、周東佑京。
盗塁トレンドは「失敗せず成功」。
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byHideki Sugiyama
posted2019/12/23 08:00
日本シリーズや侍ジャパンでの大活躍が話題になった周東佑京。ミスしない足のスペシャリストほど頼もしいものはない。
盗塁死せず盗塁できる選手は誰?
そういう観点で見たときに、盗塁は単純な「盗塁数」ではなく「盗塁収支」で評価するべきではないかと思っている。特に今季のNPBは、その視点で見ると評価がかなり変わってくるのだ。
<セ・パ両リーグ「盗塁収支(盗塁成功数―盗塁失敗数)」の10傑>
○セ・リーグ
1 山田哲人(ヤ)30
(33盗塁3盗塁死 率.917)
2 大島洋平(中)23
(30盗塁7盗塁死 率.811)
3 近本光司(神)21
(36盗塁15盗塁死 率.706)
4 増田大輝(巨)13
(15盗塁2盗塁死 率.882)
5 野間峻祥(広)12
(14盗塁2盗塁死 率.875)
6 梅野隆太郎(神)11
(14盗塁3盗塁死 率.824)
6 重信慎之介(巨)11
(14盗塁3盗塁死 率.824)
7 京田陽太(中)10
(17盗塁7盗塁死 率.708)
7 植田海(神)10
(12盗塁2盗塁死 率.857)
8 鈴木誠也(広)9
(25盗塁16盗塁死 率.610)
○パ・リーグ
1 金子侑司(西)31
(41盗塁10盗塁死 率.804)
2 源田壮亮(西)21
(30盗塁9盗塁死 率.769)
3 周東佑京(ソ)20
(25盗塁5盗塁死 率.833)
4 荻野貴司(ロ)18
(28盗塁10盗塁死 率.737)
5 外崎修汰(西)16
(22盗塁6盗塁死 率.786)
5 福田周平(オ)16
(30盗塁14盗塁死 率.682)
7 西川遥輝(日)14
(19盗塁5盗塁死 率.792)
8 岡大海(ロ)12
(13盗塁1盗塁死 率.923)
9 釜元豪(ソ)10
(11盗塁1盗塁死 率.917)
9 辰己涼介(楽)10
(13盗塁3盗塁死 率.813)
特筆したい山田、梅野、周東の数字。
注目していただきたいのはセ・リーグだ。盗塁収支で言えば新人で盗塁王に輝いた近本よりも、山田哲人の方が9つも上なのだ。
山田は今季、昨シーズンから続く38回連続盗塁成功のNPB記録を作った。しかし9月14日のDeNA戦で微妙な判定の挙句アウトになると、そこから3連続で失敗。現代の盗塁とはいかに微妙なタイミングで決まるものなのかを知らしめた。
この時点で2位につけていた近本が9月以降に10盗塁(1盗塁死)と追い上げて盗塁王のタイトルをものにした。それはそれで素晴らしいが、数字における「走塁」での貢献度では山田がわずかに上回ったように感じる。
もう1つ、阪神の梅野は14盗塁3盗塁死。捕手でこの成績は特筆ものだ。走塁は期待されない捕手だが、彼は別格だ。
パ・リーグでは盗塁王の西武、金子が収支でも1位だが、注目すべきはソフトバンクの周東佑京、釜元豪の2人だ。ともに育成上がりで、今季プロ入り初盗塁を記録したが、盗塁成功率、収支ともに素晴らしい。こういう走り手がどんどん出てくるのがソフトバンクらしい。