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ロナウジーニョは裕福、マルタは?
ブラジル2大名手の少年少女時代。
text by
沢田啓明Hiroaki Sawada
photograph byGetty Images
posted2019/12/22 19:00
ブラジルが誇る男女サッカーの2大スター、ロナウジーニョ(左)とマルタ。ただ2人の経歴は大きく違う。
ペレも賞賛する生真面目、真剣さ。
「フットボール王国」ブラジルでは、ペレが「王様」、マルタが「女王」と称される。
ペレ自身もマルタのプレーに魅了され、「彼女はスカートをはいたペレだ」と賞賛しているほどだ。マルタが出場した試合で、スタンドに「私はペレがプレーするのは見ていないが、マルタのプレーならこの目で見ている」というプラカードが掲げられたというエピソードもある。
同じように国内外のクラブでキャリアを築き、セレソンで活躍し、世界年間最優秀選手に複数回選ばれたとはいえ、2人が歩んできた道のりは著しく異なる。
ロナウジーニョは、世界的なスター選手となって以降、夜遊びや不摂生が目立った。そのせいで選手生活を縮めたが、それでも富と名声をほしいままにしてきた。一方、マルタは常に生真面目で真剣だ。ブラジルと世界における女子フットボーラーの地位向上にも、熱心に取り組んできた。
彼女の生涯収入はロナウジーニョの数十分の一に過ぎず、知名度の点でも遠く及ばない。しかし、大いなる勇気と不屈の精神を発揮し、ロナウジーニョの前には存在しなかった数々の険しい壁をひとつひとつ乗り越えてきた。そのことを、彼女は誇りに思っていいはずだ。
試合では、ふたりのスーパースターが「らしい」プレーを随所に披露し、それぞれゴールも決めた。人々は、大満足でスタジアムを後にした。
試合後、他のメディア関係者らと押し合いへし合いしながら選手たちにインタビューをし、スタジアムの裏門から外へ出た頃には、すでに熱帯夜の帳が下りていた。