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久保建英、初カンプノウの試合前。
カメラマンが捉えた“一瞬の瞑想”。
posted2019/12/14 20:00
text by
中島大介Daisuke Nakashima
photograph by
Daisuke Nakashima
久保建英がカンプノウでプレーをする。
バルサの育成組織“ラ・マシア”に所属していた久保は、バルサの18歳未満の外国人選手獲得・登録違反により公式戦への出場ができなくなりバルサを退団。Jリーグでのプレーを経て、18歳になった今季スペインに戻ってきた。
しかし、大多数の予想や期待を裏切り、バルサの宿敵であるレアル・マドリーへの移籍を選択した。
当初はマドリーの下部組織、カスティージャでのプレーも想定されていたようだが、選手本人とクラブの意向により、より高いレベルでのプレー時間の確保が優先され、今季リーガ1部に昇格したマジョルカにレンタル移籍している。
そんな久保にとって12月7日にバルサのホームで行われたリーガ第16節は、古巣への帰還であり、一度はそこでデビューすることを夢見たカンプノウでのプレーとなった。
この試合を撮影するにあたり、マドリディスタとしてバルセロナに戻ってくることになった彼の感情が窺える一瞬を見つけたかった。
左手人差し指を眉間に当てて。
21時のキックオフから90分前、観客用の扉が開く。一番乗りの者たちだけがまだ無人に近い、そしてまだ少し光量が落とされ、がらんとした巨大なスタジアムの神秘さに目を奪われる権利を得る。その時に、今日戦うピッチの感触を確かめるために彼は芝の上に踏み出してきた。
センターサークル付近にすでに姿を現していた同僚を傍に、メインスタンドから左手のゴールの方に進む表情はリラックスしているようだった。
その刹那、すっと立ち止まりゴールを真っ直ぐに見据えると、視線を少し下げ目をつむり左手人差し指を眉間に当て瞑想する素振りを見せた。
10秒にも満たなかった。しかしこの束の間に、18歳のまだ“少年”ともいえる彼の頭の中にどれほどの思いが浮かんでいったのかと思うと、言葉にできない。