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「天狗になれる選手になりたい」
浅野拓磨、不思議な言い回しの理由。
text by
了戒美子Yoshiko Ryokai
photograph byGetty Images
posted2019/12/13 11:40
浅野拓磨はプレースタイルとは対照的に、性格には温厚な男だ。それだけに「天狗」になるのは難しいという。
日本では、控えめな態度がデフォルト。
一方で、浮かれたとも言えるこの振る舞いはまったく日本的ではない。1点とっても謙虚に次を狙いにいくのが正しい姿勢だと、暗黙のうちに思っている人が大多数ではないだろうか。
「僕は日本人の中でも日本人的な性格で、調子に乗るのはやっちゃいけないことだという風に抑えていました。特に日本ではそれ(控えめな態度)が『こいついいな』ってアピールになって次のプレーに繋がるんです。
でも海外ではそうじゃなくて結果がすべてなので、天狗になろうが何になろうが、結果を残せば次に進める。僕はそのメンタリティを身につけたいなって正直思っています」
日本人としては、うんうんと頷きたくなる話だ。1点とったくらいで調子にのって、次でダメだったら却って恥ずかしいという感覚もある。
日本代表の選手たちを見ても、調子にのる、天狗になる選手は少なく、得点直後は喜びを見せても、「次に切り替えて」淡々と取り組む選手のほうが多い。そしてその方が好感度も高い。
自信は欲しい、でも簡単には変われない。
浅野はそんな自分を意識しながらも、こう続ける。
「(今季リーグ戦で)2点取っただけで簡単には変わらないですけど、得点が自信になるのは間違いないんで。感覚がどうこうっていうところまではまだですけど、今日のゴールはイメージ通りでしたし、こういうイメージ、自信を持って次の試合にもつなげていけたらなって思います」
「今日のゴール」というのは、後方からの縦パスと浅野の飛び出しのタイミングがピタリと合い、コントロールしやすく相手に狙われにくいトラップができ、スピードに乗ったままシュートを決めた理想的なものだ。試合終盤に追いつかれて1次リーグ敗退が決まったものの、浅野の先制点は価値あるゴールだった。