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異例の投手転向、プレミア12で自信。
オリックス張奕「来季は10勝が目標」。
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byKyodo News
posted2019/12/05 11:40
今季は5月に支配下登録され、8試合で2勝4敗、防御率5.93。プレミア12では台湾のエースとして活躍した。
「ピッチャーやるか?」
「このままではクビかな……」
そんな考えがよぎっていた昨年6月、酒井勉育成コーチに、「ちょっと投げてみて」と言われた。酒井コーチにはそれ以前から、「お前は球筋がいいから、ピッチャーやらないか」と何度も勧誘されていた。
ブルペンで投げると、いきなり145kmを計測した。
「ピッチャーやるか?」と言われ、迷わず「ハイ」と答えた。
本当は、野手としてプロで活躍するのが夢だった。しかしもう「ここまでやってダメならしかたない。ピッチャーとしてチャンスをもらえるのなら、やるしかない」という思いだった。
転向後は球速が上がり、150kmを超えるようになったが、課題はコントロールだった。昨年までのチームメイトで、張が「理想とする投手」と言う金子弌大(北海道日本ハム)にならい、1球1球、自分の感覚を意識しながら、キャッチボールを大事に積み重ねていった。
そして今年5月、念願の支配下登録を勝ち取った。
中継ぎで一軍初登板を果たすと、8月8日の日本ハム戦で初先発し、6回を無四球で2安打1失点に抑え、初勝利を手にした。最終的に8試合に登板して2勝4敗、防御率5.93でシーズンを終えた。
2勝は挙げたものの、悔しいシーズンだったと振り返る。後半の4試合は、ピンチの場面で崩れて5回を投げ切ることができなかったからだ。
プレミア12で得た大きな自信。
しかしプレミア12では、別の自分を見つけることができたと言う。
「シーズン中は、ピンチになったら、『ヤバイ、どうしよう』と、周りが見えなくなって、体も固まっていたと思う。でもプレミアのマウンドでは冷静で、チームメイトの声やファンの声援とか、いろいろ聞こえて、今までとは違った感覚でした。なんか、楽しかったんですよね。背負っているものが大きかったので、プレッシャーを感じて、毎日必死でしたけど」
シーズン中の投球数は最多で95球だったが、プレミア12のベネズエラ戦では102球、韓国戦では112球と、初めて100球以上を投げ、抑えられたことは、スタミナが課題と自覚していた張にとっては大きな自信になった。